+Taboo+
天に浚ってあげましょう。ずっと貴方が望むまで。
夜半の月が笑う空。
暗い部屋の中、唯一の明かりはベッドサイドのライトのみ。
弱弱しい明かりが照らすのは僅かな範囲。
ベッドが軋むのと同時に、壁に染み込むようなぼやけた影がくら、と動いた。
「ん・・・ぁ・・・・・はぁ・・・・」
揺れた身体がそのまま後ろに倒れかけたが、腕を引かれ目の前の男に寄りかかる。
ガタイの良い男の身体は傷だらけで、深い傷は生々しく残っている。
反対に、倒れこんだ少年の身体は滑らかで、瑞々しかった。
「危ないな。翼を潰してしまうところだった」
「あ・・・ぅ・・・・・・ス、ネーク、さ・・・ん・・・・」
スネークと呼ばれた男が先端の青く根の白い翼を撫でる。
翼の間を探る手に、ピットは長く留めていたような熱い息を吐いた。
優しく梳くように弄られたかと思えばくしゃりと握られる羽。
ピットの翼はそれから逃げるかのように開閉を繰り返した。
「そう、逃げるな」
ピットはあぐらをかいたスネークの上に乗って、向かい合うように座っている。
ピットの姿は一糸も纏わぬ、まさに絵に描かれた天使の様な姿。
けれどもその秘所は滑った液を滴らせながらスネークのものを深々と飲み込んでいる。
スネークが音を立てるように腰を揺すれば敏感に反応して収縮と弛緩を繰り返す。
汗ばむ互いの身体は、蒸気が出そうなほど熱かった。
「キレイな羽だ、温かいし芯がしなやかで触り心地がいい」
「・・・ふ・・・・ぁ・・・あっ・・・!」
するするとスネークの指が骨に沿ってピットを翼を走った。
先端まで滑らせばピットの身体が跳ね、額をスネークの肩に埋める。
いやいやと左右に動く甘い茶色の髪が、スネークの太い首筋をくすぐった。
スネークはピットの頭を撫でながら、笑う声と共にさらに腰を揺さぶった。
「ん・・・・ぅ・・あ・・・アあぁぁっ!!」
一層甲高い嬌声をあげたかと思うと、ピットは震えて脱力した。
とろ・・・と腹部には蜜液が散り、足へと伝っていく。
ひどく快感に弱いこの天使を、スネークは愛しく感じた。
ピットは身体の全ての感覚が痺れたように、細かく震えていた。
「ピット、まだだ」
熱を保ったままのスネークに再度突き上げられ、ピットに身体が跳ねる。
ぞくりと柔らかな肌が粟立ち、苦痛の間に刷り込まれた快楽が押し寄せた。
眩暈を起こすような快感に、息絶え絶えでも甘い声があがる。
「あ、んぁ・・・ぅあアっ・・・・」
骨の髄まで蕩けそうな熱と快感。
淫らに突き上げられ、生々しい摩擦の激しさに艶やかな声を発した。
かりかりとピットの爪がスネークの背にひっかいて痕を残す。
スネークは薄く笑いながら、裂かれるむず痒さにゆらゆらと身体を揺らした。
粘着質な水音が、2人の間に響く。
「やぁっ!・・・スネーク、さん・・・も・・・イ・・ぁ・・・あ・・・・」
ピットの身体はすでに限界だった。
慣れきれない快感に、すでに腕一本動かない。
高く上がる嬌声も、恥じらいの名残は消えうせている。
大きな碧い宝石の様な瞳からは上下に揺れるたびに雫が零れる。
無意識に動いている自分の秘所の奥と、掠れた声がかろうじてピットの意識を繋ぎとめた。
スネークとこんなことをするのは、初めてではないのに。
刺激に悦ぶ身体に羞恥を覚えているのに。
「我慢できないか?」
耳に吹き込むような声で囁かれた。
それだけでピットの血潮がより熱を持ち、ぞくりと細腰が震えた。
仰け反った細い喉に噛み付かれ、連続して秘所を強く突き上げられた。
ぐちゅっと秘所の淫らにとろけた部分を擦りあげられ、ベッドがぎしっと重い音を立てた。
「ひっ・・・あ、あ、ぁぁぁアアぁぁっ!!」
ピットが背を仰け反らせて翼を震える。
目の前が白く染まり、閃光のように強い快感が身体を走った。
すぐ後で秘所の中でも同じものが弾けるのを感じて、ピットはぐたりと脱力する。
余韻に浸るピットの身体をスネークは抱き上げて、ずるりと自分のものを引き抜いた。
つられて内に打ち出された蜜液が零れて、内股を伝う。
「ん・・・・ぁ・・・ぅ・・・・・」
「ピット・・・」
スネークの武骨な指がピットの柔らかな頬を伝い、涙を拭う。
その手は、銃を握るものとは思えないほど、優しい。
ちゅ、と終わりのサインに交わされた口付けは苦い煙草の味がした。
『ピット』
『スネーク・・・さん・・・?』
ふわふわとして輪郭もハッキリしない世界。
目の前のことを頭に留めて置けない。これは夢だ。
前に現実で起きたことを思い出している夢の世界だ。
『ピット、人間を浅ましく思うことはないか?』
この質問。
スネークは古いリボルバーの銃を手の中で遊ばせている。
リボルバーの照準を合わせながら、何か、遠いものを見ているよう。
何を見ているの、とも言えない。
ただ自分はこの後こう答えるのだ。
『そんなことはないです』
笑ってそう答えたら、次の瞬間きつく抱きしめられた。
「ピット」
「スネーク・・・さん・・・?」
ぼんやりと目を開けば、視線の先にはスネークの顔があった。
翼を傷めないためだが、ピットはスネークの部屋で寝る時はスネークの上にうつ伏せで寝ている。
スネークはピットを腹に乗せて、自分の腕でピットを落ちないように固定して眠る。
これはピットとの身長差があり、尚且つスネークだからこそできること。
ピットは横で寝ることも出来るのだが、スネークがそれを良しとはしないらしい。
「朝だぞ」
ゆさ、とスネークが腰を軽く上げてピットを揺らした。
ピットの身体がずりずりとスネークから落ちて行き、両足の脛がシーツに辿り着く。
のろのろと寝癖のついたままの髪を払い、顔を上げればスネークと目が合った。
「ん・・・おはようございます・・・」
「おはよう」
ピットは羽を何度か開閉させるとそのまま洗面台に飛んでいく。
歩かないのは、足腰が痛いからだ。
洗面台の鏡に映った自分を、ピットはうんざりした顔で見詰めた。
頬には涙の伝った跡がある。
目線を下げて身体を見れば赤い跡が点々と見える。
「何・・・してんだろ・・・僕・・・」
こんなことをしていては、いつかあの美しい雲の世界に戻れないような気がするのに。
穢れた身体では大事なあの方に嫌われるような気がするのに。
どうしようもなくて、途方に暮れる。
スネークは、彼は純白の自分を好いてくれている。
だけど、その彼が自分を穢しているような感覚にもなる。
人の前では、キレイでいたい。大事な人の前では、純白でいたい。
なのに心がどんどんくすんでいく。澱んでいく。
暗闇に、堕ちたくない。穢れた者と、見られたくない。
最初、スネークとこんな関係を持つつもりは無かった。
彼が『人間を浅ましく思うか?』と言ったから、自分は『そんなことはないです』と。
そう答えてから、最後には押し倒された。
浅ましいのは、天使でありながら無自覚にも人間を誘ってしまった自分だ。
誰かに謝りたい。誰に謝ればいい。矛先の無い謝罪と罪悪感が胸にひしめく。
あともう少しでもスネークが嫌な人なら、事態は変わったのに。
人でなしなら、自分は弓を引き、矢を向けられるのに。
人間の、彼の想いは愛おしい。
その心を手放したくない。
自分を、消してしまいたい。真っ白にしてしまいたい。
「パルテナ様・・・」
切ない想いが胸から喉に這い上がり、嗚咽の様な泣き声を上げそうになる。
ピットは慌てて口を抑えながら、空いている手で蛇口をひねった。
勢いの良く出る水の下に口を押さえていた手を差し込む。
掬った水はひんやりとして、ピットの涙の跡を消した。
不安だけは、水で流すことは出来なかった。
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