『別館用小説置場』
(女性向です)
+わかちあうこと+
試合中の神殿から歓声が聞こえる。
今日の乱闘時間は3分、もうそろそろ終わるはずだ。
控室の空港みたいなイスには次の乱闘で出番が来る人達が座っている。
その席の一番後ろから、一番前の席より少し前上方に設置されたテレビに視線を向けた。
そこには剣を納めて勝利のポーズを取る、リンクの姿がでかでかと映し出されている。
「リンク・・・」
続いて戦績が映し出され、自然と頬の肉を緩ませた。
あと一勝、ファルコに奪われていたらサドンデスになるところだった。
けれどそこを守り切るのは流石だと、なんだか嬉しくなってしまう。
暫くして試合会場からの退出口から乱闘を終えた彼らが出てきた。
「フォックス!お前見てたのかよ!」
「ファルコ、後ろ取られてたなー」
「うるせぇ!・・・アーウィンじゃねぇんだから仕方ねぇだろ!」
「まだまだだな、ファルコ」
2位のファルコをからかっていると、ふと視線を感じて退出口を見る。
一番最後に出てきたのだろう、リンクが笑みを浮かべながら手を振っていた。
ファルコを適当にあしらってリンクに近づく。
「リンク、お疲れ様。流石だな」
「ファルコさんも強かったですよ」
「まだまだだよ」
「おや、手厳しいリーダーですね」
くすくすと笑いながら先程まで座っていた一番後ろの席に2人で並んで腰を落とす。
周りを窺えば試合をしていた人と次に試合をする人で、部屋は些か狭く感じられた。
「フォックスさんの試合って次でしたっけ?」
「俺は次の次だよ」
リンクの試合が始まってから少し後に来たんだ、と告げる。
「早目に来たんですね」
「・・・リンクの試合見たかったから」
照れながら言った言葉に、言われたリンクはもっと顔は紅潮させていた。
思いがけない反応に、驚いたしっぽが思わずぱたりと跳ねる。
「あ、いやその、応援しようと思って・・・」
「そ、そうですか・・・フォックスさんが見ていると知っていたら・・・」
「知ってたら?」
「回復に・・・がっつかなかったのに・・って・・・」
どうやら顔の赤い理由は回復アイテムを死守した事にあるらしい。
確かにリンクは最後の辺りで名のコールが飛ぶほどダメージを受けていた。
加えて敵にはドローになりそうなファルコがいたのだ。
回復アイテムにがっついても仕方がない。
まぁ、傍から見れば乱闘の最中タルを叩き割り中の食料を食べている光景。
「俺だって体力危ないと結構回復アイテムがっつくけどなぁ。負けたくないし」
「それはそうですが・・・」
眉をハの字に曲げるリンクに自分の頬がまた緩む。
彼が可愛くて可愛くて、幸せな甘ったるい気持ちになる。
そんな心を伝えようと口を開いた途端、テレビ画面から乱闘開始の声が響いた。
思わずリンクと同時にその画面に目が向く。
次の乱闘が始まったのだ。
再度視線を泳がせれば周囲には次の試合―――俺と闘う人達が集まっていた。
まだ先の試合でリンクと闘った人も何人か残っている。
右にも左にも人、人が多い。
リンクを口説いている場合じゃないな、とイスと平行についている脇の小さなテーブルに腕を乗せた。
ふぅとお預けを食らった気持ちで息を吐く。
「あ、そうだ。リンクなんか・・・」
『飲み物でも飲む?』は言葉にならなかった。
リンクが下を向いたまま、俺の指に自らの指をそっと触れ合わせてきたからだ。
どきん、と心が高く跳ねる。
人が大勢いる、のに。
人が大勢いる、から。
そろりそろりと剣を握る指が俺の銃を握る指を這う。
そのまま骨の輪郭を辿るようにリンクの指が絡まってきた。
目をあちこちに彷徨わせるものの、全神経は恥ずかしいぐらい指先に集中している。
しっぽの先から耳の先まで、身体が震えそうなのに緊張で張り詰めていく。
長い人差し指が俺の爪の上り、少し内側へ回り込みながら指の股にくっついて止まった。
続いて少しためらいがちに中指と薬指が伸びて同じように絡まる。
自分は手袋は全て指先までカバーしているが、リンクのものは指先が出ている。
そこからじんわりと、熱が伝わってくる気がした。
そっとリンクの方を見れば髪の毛でほとんど隠れていたけれど、頬が熟れていた。
俺の方から手を動かしてほんの少しだけ深く繋がる。
軽く手を強張らせながらもリンクはそれを受け入れてくれた。
こく、といつの間にか乾いている喉が唾を飲み込む。
時間が止まっているのか過ぎ去っているのかもわからない。
ただ腹を焼くような恥ずかしさと胸を焦がす歓喜が顔を赤に染め上げていくばかりだ。
少しの勇気と無謀を、大きな愛情でリンクの長い耳に嘘の言葉を囁く。
「・・・リンク、食べカスついてる」
「え・・・ぁ・・・ッ?」
慌てて繋いだ手を離して口元を拭おうとするリンクを押さえて、掠め取るように彼の唇を奪った。
唇の柔らかさも熱も感じる暇がないほど素早い口付け。
あまりの出来事に勇者はぽかんとした顔をしていた。
その隙をついて彼の手を上からぎゅうと包み込む。
擦れ合う指先にちりりと、静電気が走った気がした。
「リンク」
「フォックスさん」
同じ瞬間に互いを見たせいか一瞬目が合い、見詰め合うことなく反射的に下を向く。
それから2人で手を繋いだまま、言葉も無いまま顔を赤くさせていた。
他の人達は画面に夢中で、こちらには誰も視線を向けていない。
不意に大きな爆発音を聞き取り、のろのろと2人で画面を見上げる。
画面の中ではボム兵の雨を降り注ぐサドンデスが開始されていた。
この時、どうか、もう少しだけ試合が伸びますようにと。
俺とリンクは同じことを願っていた。
fin.