+依存+
只今ヴィオは寝室のベットの上で読書中。
今読んでいる本は半分以上を読破していた。
ヴィオならば、今日中には読みきれる量。
一度目を休め、よし、とヴィオが気合を入れた瞬間、やわらかい圧力が背中にかかった。
軽いわけではないが、潰れるほど重いわけでもない。
その圧力はヴィオに圧し掛かったまま、動こうとはしない。
ヴィオもこの重みの正体は知っていた。
「・・・シャドウ、どけ」
「・・・やだ」
「俺は取り込み中だ」
「本読んでるだけじゃん」
「だから取り込み中なんだ」
「・・・どかないからな」
「・・・だったらあまり体重をかけるなよ」
「やだ。かける」
ヴィオは重い溜め息を吐いて、シャドウとの会話を終了させた。
そのまま文字の兵隊に視線を戻し、読書を再開する。
シャドウはヴィオの背に身体を預けながら、ぼぅっとしていた。
部屋にはヴィオがページを捲る音だけが鳴り、無音に近い状態になる。
「・・・さてと。読んだ」
ぱたん、とヴィオが読み終わった本を閉じた。
立ち上がろうとして、シャドウが全然動いてない事に気付く。
まさか、と思って首だけ振り向いた。背後は案の定、だった。
「寝てやがる・・・」
たたき起こそうかと本を握るが、その手はまた元の場所に下りる。
その代わり、ヴィオはゆっくりとその場から立ち上がった。
支えをなくしたシャドウの身体はそのまま仰向けに倒れる。
それでもシャドウは起きないほど爆睡していた。
「よく寝ていられるな・・・」
感嘆に似た呆れの溜め息がヴィオの口から漏れる。
反対にシャドウは安らかな寝息を立ててベットに沈んでいた。
「ヴィオ・・・」
「!・・・・・・なんだ、寝言か」
まじまじとシャドウの寝顔を見詰め、少し落書きしてやりたい衝動に駆られる。
さすがに本当に描くわけにはいかないので頭の中でシュミレート。
「・・・っく・・・」
ヴィオは自分の想像に笑いを噛み潰した。
人から見たら悪趣味なと思われそうな事も、頭の中ではただの笑い事である。
一頻り想像で笑った後、ヴィオはシーツをシャドウの上に引っ掛けた。
シーツを掛けられた時、シャドウはもそっと身じろぎしたが起きる気配は無い。
「さてと、そろそろ食事を作るか・・・」
静かに扉を閉めながらヴィオそっと寝室を後にした。
「ふぁぁ・・・おはよーヴィオ」
「お前・・・なんだってこんなタイミングで起きてくるんだ・・・」
こんなタイミング、というのはヴィオが食事を作り終え、いただきますを言った瞬間である。
「あ、それスコッチエッグだろ、俺も食べるー!作ってー!」
「・・・ついでにニンジンのバター焼きも食え」
「う・・・まぁバター焼きなら我慢する・・・」
「ちょっと待ってろ・・・」
持っていたフォークを置き、ヴィオは台所に戻っていく。
シャドウは寝癖を直しながら、ヴィオの料理が出来るのを上機嫌で待っていた。
「・・・ヴィオ、まだー?」
「まだだ。もうしばらく待て!」
「はーい・・・」
疲れた溜め息がヴィオの口から落ちる。
「俺に頼りすぎだぞ、シャドウ・・・」
ごっこ遊びのような生活でも安らかさを感じてしまう自分に、ヴィオはまた溜め息を吐いた。
fin,
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