ウルフは自室まで戻ると、荷物のようにフォックスをベットの上に放り投げた。
フォックスの身体がベットのスプリングでゆらゆらと跳ねる。
「チッ・・・手のかかるガキだぜ」
「う・・・るふ・・・、ウルフか・・・?」
「起きたか?ったく何やってんだよテメェは」
フォックスの顔を覗き込むように、ウルフは身をかがめる。
シーツに鼻頭を擦りつけるようにして倒れているフォックスが億劫そうにウルフを見上げた。
「・・・トイレ、連れてってくれないか?」
「あ?」
フォックスは自分の腹と口に手を持って行き、なんとも言えない表情をする。
「変な薬飲まされた・・・吐く・・・」
「・・・あんのマッドカメレオンがっ!!」
余計な手間かけさせやがって!!
ウルフはフォックスの腕を掴むと乱暴にバスルームに引きずり込んだ。
強引に腕を引かれたフォックスはそのままウルフに後頭部を鷲掴みされて、便器まで持っていかれる。
「いたたた・・・」
「オラ、とっとと吐きやがれ」
「うう・・・」
フォックスは情けない、と思いつつも込み上げてくる胃の中の物を吐くべく、喉の奥を指で突いた。
あまり他人に聞かせたくない嗚咽がバスルームに木霊する。
「・・・・・・大丈夫かよ」
フォックスのあまりの嗚咽の声にウルフはちょっと引きながらも声をかけた。
眉を顰めながら、換気扇の強さを一段階上げる。
「なんか・・・消費期限、賞味期限が切れて3年経ったような酢と牛乳を飲んだ気分」
「リアルに言うんじゃねぇ。とっとと腹ン中のもん吐いちまえ」
ちょっと死んだ魚のような目になったフォックスが段々哀れに思えてきたのか、ウルフはゆっくりと背中を擦ってやる。
多少はマシになったのだろうか、嗚咽の声は次第に収まっていった。
「あ・・・うっ・・・・ぅええっ・・・ふ・・・ぐぅっ・・!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「はぁ・・・・は・・・・大丈夫・・・そろそろ胃液も出し切ったみたい・・・」
「・・・そうか。とりあえず顔洗って口濯げ」
「ああ・・・」
ざばざばと脇の水道で口を濯ぎ、口周りや顔を洗う。
ウルフはフォックスが顔を拭いたのを確認した後、フォックスを半ば担ぐようにしてベットに向かった。
顔色が赤だったらフォックスはまるで酔っ払いのようだろうが生憎かなり青ざめていた。
「う〜え〜・・・」
「ベットで吐きやがったら殺すぞ」
「あ〜・・・いっそ殺して・・・気持ち悪すぎ・・・世界が回る・・・」
「・・・もう寝ろ」
フォックスは言われた通りおとなしく横になって・・・いたのもつかの間。
また呻りだしたのだ。
「今度は何だ!?」
「うーあー・・・ウルフ〜・・・喜べ〜・・・なんの薬飲まされたか分かったぞ〜」
なんだか妙にフォックスの眼に殺気がこもっているのをウルフは感じた。
シーツをぎゅうと握りしめて、何か吐き気以外のものを耐えているように見える。
「・・・何だったんだ?」
「ハハハ、催淫剤と痺れ薬みたい・・・」
それのなにがどう喜ばしいんだ馬鹿野郎。
そう思っていたらフ・・・とフォックスの表情が変わった。目が据わって、死神みたいな顔になっている。
「・・・ウルフ、今度戦うとき俺ウルフじゃなくてレオンを集中的に狙うから。邪魔するなよ」
息絶え絶えなくせに冷や汗の出るようなフォックスの表情と声に、ウルフは『落ち着け』としか言いようが無かった。
「はぁ・・・苦しい・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・黙って見てないでなんかしろよ」
キレながら悶えてる奴に何をどうしろと言うのか。
ウルフは頭を抱えた。
「・・・俺にどうしろと」
「もー介抱でもなんでもいい。とにかく・・・身体が熱い・・・」
くいっと手首を自分の方に折り曲げて、フォックスはウルフを呼んだ。
びりびりに裂かれたとはいえまだ原型を保つ服を下から自分で捲り上げる。
「・・・・・・・手間のかかるガキだぜ・・・」
ウルフは上着を脱ぐとよっこいせ、とフォックスに覆いかぶさった。
「いいか、俺は別にテメェの言うことを聞くわけじゃねぇ。仲間のしたことの尻拭いをするだけだからな」
「ああ、分かってる・・・いいから・・・早く・・・」
とろんとしたダークグリーンの瞳がゆっくり閉じられる。同時にその唇に口付けを落とした。
抵抗しないフォックスからウルフは服を剥いでその辺に放る。
最早ズタボロの服など引き千切っても良かったが、フォックスならば縫い直してまた着るとも言いかねない。
「は・・・久々・・・とでも言うかな・・・?」
「・・・ガキがよく言うぜ」
「俺そろそろ・・・三十路なんだ、け・・・ど・・・ン」
「・・・言ってろ」
ウルフは鼻で笑いながらフォックスの首筋に舌を這わしながら胸の突起に指を添えた。
硬い指の腹で何度もその上を往復すれば、さして時間をかけずに赤い弾力のある実に変わる。
反対側の胸の突起は舌で突き、時折歯を立てた。
「あ・・・ン、ぅ・・・」
薬の入ったフォックスはウルフの愛撫に熱のこもった息を吐き、子供のように身体を擦り寄せる。
ウルフはそんな様子を見ながら、ふと、昔の事を思い出した。
「(あの時、コイツは二十歳にもなってなかったよな・・・)」
それなりに昔から何度かウルフはフォックスを抱いたことがあった。
きっかけはなんだったか忘れてしまったが、気がつけば回数を重ねていた気がする。
愛人ではない。ましてや恋人でもない。ただ、そこに石が落ちて存在しているという感覚で行った気がする。
情は、無いはずだ。
「(ぱったりとやめちまったのはいつだったか・・・)」
「ん・・・あっ・・・」
ウルフは考えながらも舌と指を動かし続ける。
知らない身体ではないから、少々の考え事をする余裕はある。
「・・・ウルフ」
「!・・・なんだ?」
「さっきから、何考えてるんだ?」
「・・・別に。テメェは黙って声上げてろ」
「・・・っ・・・それちょっと、言葉が・・・は・・ン・・・変じゃ・・ないか・・・?」
「うるせぇ」
ウルフは吸っていた胸から顔を上げると、黙らすようにフォックスに口付けた。
「んん・・・」
フォックスの尖った犬歯の裏筋を舐めてくすぐる。
フォックスは顔をそらそうとしたが顎を捕らえて押さえつける。
唇と唇の間で酸素と腰が一緒に溶けた。
「ふ・・・ぁ・・・っ!」
「・・・タバコも酒もやってねぇのか」
「ん・・・ぁ・・・好きじゃない・・・から・・・」
「そうかよ」
カリッと軽く唇を噛んですぐに離すと、フォックスの足首を掴んで足を広げさせた。
薬を使われど理性のまだ残るフォックスには羞恥を煽る恰好でしかない。
「あ・・・」
「ハン・・・もう濡れてんじゃねぇかよ」
暗に淫乱と言われ、フォックスはキッとウルフを睨んだ。
いい眼だが使う場所が間違っている、と思いつつウルフはフォックスの足を閉じられないよう固定する。
「・・・反応も悪くねぇ。昔よりも節操がなくなったんじゃねぇのか?」
「・・・薬の・・・せいだ・・・っ!」
フォックスは顔を紅潮させてプイと横に背けた。
ウルフはそんなフォックスを尻目にぴちゃっと自分の指を舐めて濡らす。
「オイ、力抜いとけ」
「ん・・・・・・っああぁ!」
爪で内を傷つけないようにしながらゆっくりとフォックスの秘所にウルフの指が入り込む。
ぎちぎちとフォックスの内壁はウルフの指を締め付けた。
「んっ・・・はぁっ・・・!・・・爪・・・立て・・・ないで、くれ・・・」
「テメェが締め付けてんだろうが」
「っあ、やぁっ・・・!!ソコ・・・や、だ・・」
フォックスの身体がビクっと跳ねる。ここが弱いところだということは知っていた。
別に愛だのムードだのを求めているわけじゃないから、弱いところをさっさと突いてやればいい。
「あ、あ、・・・っ!」
ウルフの指を三本、奥まで咥えこんだまま、フォックスは身をよじる。
秘所からは透明な液体が溢れて、ウルフの指を伝いシーツに落ちた。
ねだるようなダークグリーンの瞳と、無意識に揺れる腰がウルフを誘う。
「・・・挿れるぜ」
は、とフォックスが息を吐いたのを見計らって、ウルフはフォックスの腰を掴む。
ズズ・・・と濡れた秘所に指と入れ替わりに自分のものを押し挿れた。
「あああァァっっ!!」
フォックスがシーツを掴み、衝撃に耐えながら喘ぐ。
つぅ・・・と潤んだの瞳から涙が幾筋、零れる。
それを拭うこともせずにウルフは激しく腰を打ち付けた。
フォックスの足がガクガクと震えて何度もウルフの脇腹や足を擦る。
お互いの身体が熱い。ただ腰を振って堪えようのない快楽に追い込んでいく。
「ウ・・・ル、フ・・・っ!」
痛みよりも恍惚としたフォックスの顔にウルフはどこか懐かしいような感じにも思う。
フォックスの、こうして上げる艶やかな声も、跳ねる肢体も。
―――求められる激しい欲情も。
「っフォックス・・・」
そろそろ我慢の限界だろう。
ウルフはしっとりと汗で濡れたフォックスの身体を抱え込み、ひときわ強く貫いた。
「ヤ、・・・ああああぁぁっっっ!!!」
「く・・・っ!!」
フォックスの肢体は大きく震え、背を仰け反らせて白濁の蜜液を吐き出す。
ウルフも身震いして、フォックスの内に同じものを散らした。
乱れた呼吸が続き、しだいに小さくなる。
ズル・・・っとウルフがフォックスの内から自身を引き抜くと、ベットから降りる。
フォックスもその姿を眼で追っっていく。
ウルフは気にすることなく棚の上からシガーとライターを取るとソファーに座り、火を点した。
よく見ればウルフは上着は脱いだとはいえほぼ服は着たまま。ズボンも前をくつろがせただけだ。
全体的に多少乱れてはいるもののさして問題はない。
反対に全裸の状態のフォックスはウルフとの差に顔を赤らめていた。
「・・・シガー・・・まだ吸ってんだ・・・身体に悪い・・・」
「放っとけ。・・・テメェ、えらい溜まってたじゃねぇかよ」
ウルフはチラ、とフォックスの身体に一瞥をくれてまた元に戻す。
「そっか?最近忙しかったからなー」
フォックスもフォックスで視線をウルフから天井に移した。
フ・・・と白い煙が視界の隅に見えた。
「あの鳥野郎だっているだろうが」
「こっちは女の子がいるんだよ。早々できないって、ばれたら生きてられない」
「女・・・ああ、あの・・・」
「クリスタル。可愛い子でさー頭もいいし、優しいし・・・」
「男のヤられた後に女のノロケとはよく言ったもんだぜ」
フ・・・とまた白煙が天井に漂う。
ウルフはシガーを吸いきると立ち上がって服を整える。
「2時間後にてめぇの艦まで送ってやる。それまでに体力回復しやがれ」
「・・・ありがと・・・」
やや憮然とした表情のフォックスにウルフはぴく、と片眉を上げた。
「・・・続きは帰ってからやってもらえ」
「それどころじゃない気がするけどね」
フォックスの身体の疼きを空気で感じつつもウルフは部屋を後にする。
とりあえず、レオンを説教しに行かねば。
それから2時間、ウルフの前で正座しながらも偉そうな態度のレオンが見られた。
レオンへの説教も終わり、ウルフは自室へと戻る。
「フォックス、準備はいいか?」
「ああ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「なんだよ」
「ホントに着てやがる・・・」
フォックスはずたぼろの服をどうにか縫ったりテープで貼ったりして着ていた。
節約とかそれ以前の問題の姿である。
「・・・俺の服を着たって構わなかったんだがな」
「これまだ着れるから。ウルフの服、大きいし」
「こんぐらい羽織っとけ」
テーブルの上に丁寧に畳まれた自分の上着をフォックスに向かって放る。
恐らく前に脱ぎ捨てた上着をフォックスが畳んでおいたのだろう。
フォックスは暫し考えた後、その上着に腕を通した。
「やっぱり大きい・・・」
「行くぞ」
部屋を出て歩きだしたウルフの後を慌ててフォックスが追いかける。
「ウルフ」
「フォックス、次だ」
「次?」
「次はてめぇを墜とす」
「俺もだよ」
また会う時は戦場で。
ベットの上よりも楽しい快感を撃ち合おう。
fin.
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