(スマX:スネーク+ピット+フォックス+リンク)
昼間の日光のみの明るさの部屋でカードを切る音が聞こえる。
ピットの部屋だが、今この部屋は真剣な空気に包まれていた。
スネークはにやりと笑うと目の前に5枚のカードを扇のように開いて見せる。
向いに座るピットもしぶしぶと同じように開いた。
「そら、俺の勝ちだ。ロイヤルストレートフラッシュ」
「あー!!また・・・僕の負け・・・」
「これで6勝0敗だな」
「つ、強いですよ〜スネークさんっ!」
テーブルの脇に置いたワインをぐっと飲み、スネークはカードを山に戻す。
ピットもワイングラスを手に取ると一気に中身を飲み干した。
「じゃあ罰ゲーム」
「うぅ・・・わかりました」
1回目は首布。
2回目はベルト。
3回目は腰布。
4回目はリング全部。
5回目はブーツ。
負ける度に身体から離れていく衣服達。
今身に纏っているのは一番下の黒い服と肩から腹にかけての布のみ。
酒が入っているから寒くはないものの、どうしようもない情けなさがピットの身を襲う。
ピットは悔しそうな顔をしながら、スネークはそんなピットの顔がおもしろいのか始終にやにやしていた。
「6回目だが、どれを脱ぐか?」
「え、ええっと・・・」
脱ぐ順番としてはスパッツか、胴を覆う白布。
どちらがマシか・・・悩んだ末、ピットが手放したのはスパッツだった。
スパッツだけなら胴を覆う白布が太ももまで隠してくれる。
まるで野球拳のようなこのルール、元は下界の人間がお金をかけて遊ぶものらしい。
お金がない場合はどうやって遊ぶのかと訊いたら別の罰ゲームを付ける、と言われて。
買った側が負けた側を叩いたり、身包みを剥いでいくらしい。
罰ゲームにはこだわらなかったが教えてもらったポーカーがおもしろくてついついやりこんでしまう。
そして今に至るわけである。
ピットはベルトがないせいで緩む白布を、バスタオルのように身体に巻きつけた。
「そういう恰好の方が天使っぽいな」
葉巻をくゆらせながらスネークが呟く。
「そう・・・ですか?」
「ああ。ほとんど肌と白の部分だからな」
もっとも、スネークの世界の天使は赤子のようであり腰布一枚か全裸だったりするのだが。
「さて、まだやるか?」
「ま、まだやります!次は負けません!!」
「じゃあもうひと勝負」
新しくワインを継ぎ足し、カードをきった。
この後、スネークは負け続けラスト一枚になる。
胴布のみになってしまってから悟ったかのようにピットは勝ち続けた。
「さぁ、スネークさんもラスト一枚ですね!」
「ピットもだな!」
「あのさ、何してんの?真昼間から・・・」
溜息混じりに呟いたのはフォックスだった。
手には本日のおやつ、カップケーキを持っている。
「賭け事だ」
「ポーカーです。スネークさんて強いんですよ!」
「えー、イカサマじゃないだろうな?」
「ならフォックスもやるか?」
スネークの挑戦的な眼にフォックスも少しだけならと席に着く。
この後フォックスも勝ったり負けたりで服が一枚なった頃。
「・・・何を・・・している・・・・・」
地の底からこみあげるような声にドアを見れば、仁王立ちの勇者。
『あ゛』
「リンクさん!これはポーカーですよ!」
スネークとフォックスの声が重なり、同時に顔が青くなる。
ピットだけはにこにこと元気よく答えていた。
「・・・ピット、今すぐ服を着ろ。狐、蛇、そこに、直れ・・・!!」
リンクがすらりと背中の剣を抜いた。
「え、ちょ、リ、リンク・・・?」
「ま、待て!これはただのゲーム・・・!」
「??フォックスさん?スネークさん?」
それから2時間、パンツ一枚で年下に説教される2人の大人の姿があったとか。
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(スマX:リンク+フォックス)
『恋とは程遠い〜優しい勇者様Ver〜』
リンクは部屋に戻る前、ふと視界に入ったものに足を止めた。
「・・・フォックス・・・」
縁側でごろりと横になっている物体。
ぽかぽかした陽気が心地よいのか、腕を枕に親父寝をしている。
こちらにはちょうど背を向けるように寝ている。
ぺたりと寝たしっぽが油断しまくっていた。
僅かに近寄って、様子を伺う。
『寒そうなら、起こしてやっても、いい。』
そう思っていたが、必要はなさそうだった。
縁側は温かい。日が暮れる前には自然と起きるだろう。
リンクはもう一歩近づいた。
『眩しいなら、顔の部分だけカーテンを閉めてやっても、いい。』
そう思ったが、またその必要なかった。
スカウターのおかげで、眩しくはないらしい。
リンクはさらにもう一歩近づいた。
十分、自分の間合いの範囲。
『不用心だから、傍にいてやっても、いい』
そう思ったのだが、さらにその必要はなかった。
ある程度強度は落としているのだろうが、微細なカウンターが作動していた。
『このキツネ、どこまで・・・』
リンクは溜息をついて踵を返す。
自分のお節介とはいえ、全てが空回りしたような気分だった。
さっさと部屋に戻れば良かった。
そう思いながら部屋の外に出た瞬間、不意に縁の外から気配を感じた。
縁の外からは2、3度見たことのあるオオカミが近づいてきているのが見える。
彼がリンクが立っている3倍の距離までフォックスに近づいた瞬間。
ぱちり。
フォックスが、目を覚ました。
気配に気づいたと言わんばかりに、さっと起き上る。
「ウルフ・・・なんだよ、せっかく寝てたのに」
「寝てる場合じゃねぇ、どうにかしやがれ」
「・・・何を」
なぜか苛立っているウルフと、昼寝を邪魔されて機嫌の悪いフォックス。
喧嘩でもする気かと、隠れるように、リンクは様子を伺った。
「お前のとこのチームを俺のとこの奴らが通信で大ゲンカしてやがる」
「えっ!?」
「一触即発状態だ」
「クリスタルも入っているのか!?」
「あの女が一番レオンと言い争ってやがる」
「・・・っ急いで止めないと!」
フォックスはあたふたしながら縁側から飛び出していく。
ウルフもそれに続いた。
足の速い2人はあっという間にリンクの視界から消えていく。
彼らはライバル同士のリーダーというものだと、この間知った。
仲間を束ねる者。
仲間を守る者。
仲間を思う者。
リンクは無言で縁窓に近寄る。
もし自分に気づいていたら、あの狐は。
『いってきます』
ぐらい、言っただろうか。
仲間だったら、言ってくれただろうか。
「帰って、来るな、馬鹿狐」
リンクはカシャン、と縁窓の鍵を閉めた。
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(スマX:リンク+フォックス)
『恋とは程遠い〜可哀そうなキツネVer〜』
蛇に睨めれたカエルの恐怖。
俗に言えば浮気が妻にばれた夫の恐怖。
そんな心持で、フォックスはリンクの背を見つめていた。
リンクはリンクで黙々と朝食の準備をしている。
「あの・・・俺、何かした・・・?」
「・・・・別、に」
「勝手に出てったの、怒ってるのか?」
「・・・・別、に」
「夕飯までに帰らなかったの、怒ってるのか?」
「・・・・別、に」
「じゃあ何をそんなに怒ってるんだ?」
はぁぁぁ、とフォックスは重い溜息を吐いた。
昨日の昼間、仲間がウルフの仲間と喧嘩をし始めた。
このままじゃいかんから、とウルフと二人で止めに行った。
どうにかこうにかで、収まったのが夜。
仕方ないからそのまま母艦で寝て、翌朝に朝帰り。
玄関でばったり会ったのがリンクだったというわけだ。
ずっと不機嫌。
妙に不機嫌。
『別に』というけど全然別にじゃない。
「・・・出て行くなら」
「へ?」
「出ていくなら、『いってくる』の一言ぐらい・・・」
ズン、と重い声が台所に響く。
「ええと・・・ごめん、でも出ていく時にリンク、近くにいたっけ?」
ズン、と空気自体が重くなった。
同時にダン、とリンクの握った包丁がまな板に突き刺さる。
マズイ、フォックスは本能的に察知した。
「お前の後ろに、ウルフよりも近くに、立っていた・・・」
「・・・・・ごめんなさい、気づいていませんでした」
素直に土下座で謝る。
みっともないとか年下に謝るだとかの体裁には構ってられない。
だって、注ぎ落ちるプレッシャーが、重すぎるから。
「今度はちゃんと気づくし、いってきますも言うから・・・」
リンクがゆっくりと振り向く。
見返り美人、だけど醸し出すオーラは山姥に似ているものがある。
「・・・誓って、か?」
「ち、誓って・・・!」
「なら・・・許す・・・」
ようやく、張りつめた空気をふっと和らげてくれる。
フォックスは糸が切れたように、全身に入っていた力を抜いた。
ふと思い出して、ゆっくりと立ち上がる。
「・・・リンク」
「・・・なんだ?」
「ただいま」
リンクは少し戸惑った後、背を向けたままで言った。
「・・・おかえり・・・」
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(スマX:メタナイト×カービィ)
『バレンタインディ・ラヴ』
今日もあなたは仮面を付ける。
歓喜も嘆きも驚愕も怒りも優しい顔すら見せてくれない。
しかたないから声からあなたの表情を読み取って、思い描いてる。
でも今日は、外してくれないかな、と期待した。
「メッタメッタメッタメッタメッタナッイト〜♪」
ここはメタナイトの戦艦の中。
召喚するように名前を歌に乗せて呼ぶ。
こうすると、きっと彼は来てくれる。
むしろ飛んでくる。
「人の名を変な曲に合わせて呼ぶな!」
ほら、来た。
「やっほ、メタナイト〜」
「何の用だカービィ。私は忙しい」
ああ、所謂ケンモホロロってやつ。
本当に忙しい時は本気で構ってくれないくせに。
暇な時すら剣の修行。
一体僕をなんだと思ってるんだか。
「ちょっと、これ渡しに来ただけ」
差し出すのは僕と同じピンク色したカワイイ包み。
ラッピングのリボンのハートがアクセント。
「・・・なんだそれは」
「え、ひどい!今日バレンタインだよ!!」
「・・・・・・・で?」
自前の剣並にスパっと鋭く一閃される。
「・・・っだから!プレゼントしにきたの!」
「・・・ああ。そうか」
さしたる感想もなく、僕の手の上から箱を掬い取る。
もうもうもう!なにこの紫球体!ひどすぎません!?
もう少し嬉しそうというか、心の言葉があってもいいのに。
目の前の彼はあくまでプレゼントを『儀礼的なモノ』として見てる。
せっかく自分で食べそうになるのを我慢して作ったのに。
「・・・どうかしたか?」
「・・・別に・・・・」
ああ、心がハートブレイクしてしまいそう。
食べてもらえるだけで良いと思おう。切なすぎるけど。
悔し悲しな涙をぐっとこらえて自分に喝を入れる。
「開けてもいいか?」
「いいよ・・・」
切なさで無気力になりかけるは我慢。
今日だけは彼の前では全身全霊でいかなければ。
ひょっとしたら、顔が見れるかもと期待してるから。
「・・・ブラウニーか」
「うん。僕の手作りだよ!」
「・・・ああ」
反応の薄さにまたもや切なくなる。
『ハンカチを噛み千切るような』気持ちになる。
彼が無造作にブラウニーを口へ持っていく。
それでも必要最小限にしか仮面は外さない。
期待は見事にファールする。
「・・・良くできているな」
「だって愛情たっぷ・・・」
「残りは後で食べる」
「・・・・・・・ハイ」
ものすごい勢いで箱を閉じてラッピングを完璧に元に戻す。
「じゃあ、私はもう仕事に戻る」
「うん、頑張ってね」
お互い背を向けて歩き出す。
数歩歩いたところで、彼が思い出したかのように僕を呼んだ。
僕は振り返り、彼は半歩、僕の方を向いた。
ちらりと顔がぎりぎり見えるところまで、仮面を外した。
「カービィ」
仮面の影で暗く見えるが、流し目と薄く釣り上った唇が見えて。
まるでそれはアメとムチのアメのように、甘く囁いた。
「礼を、言う」
それでもありがとうですらない。
ああもう、僕はそういうところが・・・
「大好きメタナイトォぉ――――――っッ!!」
「そういうことを大声で叫ぶな!!」
大騒ぎしたカービィが去った後、メタナイトは一人ふぅと溜息を吐いた。
「どうしてあいつはああも恥ずかしいんだ・・・」
仮面の下の顔は先ほどの笑みとは不釣り合いなほど、赤く染まっていた。
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(スマX:メタナイト×カービィ)
『ホワイトディ・ラヴ』
いつの間にか、育ってしまった桃色の花の芽。
小さくて弱くて手が掛って仕方なかったはずなのに。
いつの間にか、自分と肩を並べている。
そしてこんなにも今、自分を悩ませる花になってしまった。
「カービィ。訓練をするぞ」
こういうと決まって嫌そうな顔をする。
「え〜・・・」
「えーじゃない!」
「戦艦のことが終わったらすぐ訓練って・・・デリカシー無いよ」
拗ねたように口を尖らせる。
仕方がないだろう、訓練でなければ私がいる意味がない。
訓練ならば、傍にいてやることができる。
育ってしまった花にできることは、その成長を見るだけ。
襲ってくる風や雨に、立ち向かうだけの手伝いをしてやるだけ。
ずっと守ってやることも、できない。
「いいからさっさと剣を構えろ」
「やっとお仕事終わったと思ってたのに〜」
「ぐずるな、やれる時にやっておかなければ」
ぴしゃりと言うと花は萎れるように溜息を洩らす。
分かってないだとか、無骨だとかをぶちぶち呟いた。
「・・・そんなに訓練が嫌か?」
「嫌っていうか・・・なんで今日なのさ」
「?・・・昨日で戦艦での仕事が終わったからだ」
「ああ、そぅ・・・やっぱやだ」
「何!?」
「今日は訓練したくなーい」
ツンとそっぽを向かれた。
私と訓練したくないということは、私と居たくないということなのだろうか。
今度はこちらの口から重い溜息が零れる。
「・・・そうか、そんなに私と居るのが嫌か・・・」
「え、ちょ、そ、そんなことは言ってないよ!」
「だがそういうことなのだろう?何やら機嫌も悪いようだし・・・」
「違うって!それは・・メタナイトが・・・」
「私が?」
「・・・ホワイトデー、忘れてるから・・・・」
ぽそぽそと俯いてどこか諦めたような声。
「・・・そんなことで機嫌を損ねていたのか」
「そんなことって!僕は・・・っ」
「ちょっと来い」
言うが早いか花を揺らすつむじ風の如くひゅんと飛んだ。
空中を滑っている間、腕の中でじたばたと暴れたがそれぐらいじゃ落とさない。
最大速度で飛べば、あっという間にカービィの部屋の前についた。
「着いたぞ」
言葉と共にぽてんとドアの前に降ろす。
花はまだむくれたままだ。
「着いたってここ僕の部屋・・・」
「まだ早いか、ぎりぎりで終わった頃か・・・」
「何が?」
「・・・部屋に入ってみろ」
拗ねたままの表情でドアを開いてみれば。
そこには満開の花―――ではなく部屋いっぱいのお菓子で埋め尽くされていた。
「メタナイト・・・これ・・・」
「・・・バレンタインデーのお返しだ」
「もしかしてこれ部屋に入れるために訓練を・・・?」
「そうだ。まぁ、部下に入れさせたが」
「メタナイト・・・・っ大好き――――――っッ!!」
「ああ、知ってる」
ぼすっとお菓子の山に2人で倒れこみながら、まったりとスウィ−トタイムを楽しんだ。
「なぁ、メタナイト様って器用なのか不器用なのかわからないなぁ」
「まぁ、カービィにご執心ってのはよくわかるけど」
後に、メタナイトの部下は語ったという。