『七夕さよなら』

「ファルコ、今日って七夕だよな」
「そうだな。なんだ、願い事でもするのかフォックス」

ズルズルと2人でそうめんを啜る。
たまたま地上に戻っていた彼らは星空の下、フォックスの家で晩飯を喰らっていた。
最初フォックスは流しそうめんがしたいとごねたがファルコのめんどくせえの一言に一蹴された。

「笹も無いのに願い事飾れないだろ」
「それもそうだな」

ついでに芋から作る墨もない。
そうこうしている内にザルの中の白い紐の塊はじわじわ減っていく。
五玉も茹でておいて良かったとフォックスは自分の手回しの良さに安堵する。
晩飯をそうめんにしようと言った時、もちろん例のネタでファルコをからかった。
当然の如くフォックスは怒られた。

「このそうめんってさ」
「あん?」
「昔の宮廷料理を真似して作られたんだって」
「へぇ。大層なもんを真似したな」

ファルコが口の端に付いためんつゆを拭う。
彼は食べる勢いが激しいのだ。

「ファルコ」
「なんだよ?」
「そうめん」
「またつまらねぇ事いうとザル食わすぞ」

もう一度からかおうと思ったが本気でザルを口に突っ込まれかねないので止めておいた。

「ファルコ、今日晴れて良かったよなぁ。彦星と織姫も会えただろ」
「アルタイルとベガか。あれは一応夫婦なんだろ」
「新婚でさっそく別居とか辛いよなぁ」
「生々しく置き換えてやるなよ。会えるだけマシってもんだ」
「・・・キャットさんには会わなくて良かったの?」

彼女の名前を出すとファルコは眉を吊り上げながらも口をへの字に曲げ、なんとも苦々しい顔をする。

「別に感動の再会する訳じゃねぇしな」
「織姫達よか近い所にいるのに」
「お前の墓参りに付き合った方がマシだ」

ファルコはそう言って最後のそうめん束を平らげた。
そっけないが、彼なりにフォックスを気遣っているのだろう。

「ファルコ」
「ごっそーさん、お茶貰うぜ」
「俺と離れても一年に一回ぐらいは会いに来てくれよ」

ファルコが麦茶を盛大に噴き出したのは言うまでもない。


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