+凶情+


「ねぇ、リンク」

金色の髪の青年は汚れたシーツの上でずっと背けていた顔を青い髪の青年に向けた。

「僕はこうして君と2人でいることが出来るだけで、幸せと思うべきなのかな?」

金髪の青年は答えない。

「なんでか、満たされないんだ・・・どうしても」

鬱な瞳で青髪の青年が自分の掌を見る。
それには僅かに赤い液体がついていた。

「それが、リンクが僕でない人を想っているせいかどうかは分からないんだけどね」

ふっと青髪の青年が笑う。
何の感情も入ってない顔で、ただ静かに。

「皮肉・・・ですか?」

ぼそりと金髪の青年が呟く。
彼には、まだ瞳に灯りがあった。

「皮肉じゃないよ。ただ、ね・・・」

青髪の青年が横になったままの金髪の青年に口付ける。
ゆっくりとその金色の髪を掻き揚げて、また元に戻す。

「安らかじゃないんだ」

青髪の青年の中では、ずっと焔のような感覚と、吐き気がするほどの狂気が存在していた。
金髪の青年と交わっている時だけ、それが薄れている。

「こう・・・ずっと両の手が宙を掻く様な感じなんだ」

青髪の青年は闇に手を伸ばして、空を掻いた。
何かが掴めそうで掴めない、その動作は矛盾に近かった。

「・・・時々、僕はリンクを殺したいと思ってしまうよ」

青髪の青年はゆっくりと目を閉じる。
頭の中では魂の無い金髪の青年を思い浮かべているのだろうか。

「憎いからですか・・?」
「違うよ」

青髪の青年は即答で否定した。

「可愛さあまってなんとやら、とは言うけどね。僕が憎むとしたら・・・きっと・・・」

こき、と青髪の青年の身体のどこかが鳴った。

「僕もなんでそうしたいのか分からないけど」

ただの自己満足を、青髪の青年はつらつらと述べる。


想い故に欲故に狂気故に愛故に。
金髪の青年が欲しいと。


金髪の青年はそれを黙って聞いていた。
ひょっとしたら、聞いていたのではなくただそのフリをしていただけかもしれない。

「リンクが死んだら悲しいのにね。でもその悲しさも、リンクが僕じゃない誰かを想ったまま死ぬから悲しいのかもしれない」

死すら欺瞞に思う青髪の青年から、金髪の青年は顔を背けた。
背けたまま、青髪の青年に問いかける。

「あなたは、私を殺して満たされるというのですか・・・?」
「満たされる・・・ワケじゃないかもね・・・」
「生きていても、死んでいても、私は私なんですよ」
「うん・・・でもきっと、リンクが死んでしまったら僕が僕で無くなりそうだから」

会話をしていても、青髪の青年の瞳は光を取り戻さない。
もはや青髪の青年に灯りが宿るのは狂気に輝くときだけとなっていた。

「マルスさん・・・」
「生きていても死んでいても、愛してるよ、リンク」



青髪の青年は本当に金髪の青年によって狂わされているのだろうか。
もしかしたら、金髪の青年が青髪の青年の狂気を薄めているのかもしれない。
2人はまだ、その事には気付かない。
闇が晴れない限り、気付くことはできない。















                                                fin.
















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