+嵐の如く+
「いよーうヴァイス!」
「ギルダー!?」
風の様な男は、ある日突然やってきた。
いや、風というと軽すぎる。むしろ嵐と言った方がいいだろう。
その嵐の男は、本当に嵐の如くやってきた。
夕食と寝床をついでに頼んで。
「ヴァイス、いいコックを雇ってるじゃないか」
食後、ギルダーはヴァイスの部屋で話をしていた。
話すことはもちろん今までのヴァイスの旅路。
もちろん大まかな事は会議室で話した。
とはいえ、その時どうだったかとか、個人的な事は話せていない。
それを聞かせろとギルダーはヴァイスの部屋にまでやってきたのだ。
「ヤフトマーで雇ったんだ。元はだんご屋の看板娘だったんだけど」
「腕もいいが俺としてはもう少しナイスバディ、そうだなその子の姉さんの方が・・・」
「ってどこ見てんだよアンタはっ!」
すかさずヴァイスはツッコミを入れる。
本当に油断も隙もあったもんじゃない、という目でギルダーを見た。
「まぁ冗談だ、冗談。ヤフトマーって所の事をもっと話してくれよ」
「ったく。えーっとヤフトマーにはなんか変わった酒とかがあって・・・」
変わったタルに入ったつんとした匂いのする酒。
多分あのコメと呼ばれる実から作られたものだろう。
「酒?飲んだのか?」
「まさか。俺未成年だし、結構高そうな酒だったしな」
「あ〜俺もついてきゃ良かったぜ〜・・・・・・ん、お前今で幾つだ?」
「17歳だけど・・・?」
「17なら酒ぐらい飲めるだろ?」
「・・・15の時に仲間に1回無理矢理飲まされて、それ以来絶対飲むなって」
「誰が?」
「親父。母さんは怒らなかったけど親父がなんか口すっぱくして言ってきたんだ」
「ほぉ・・・だったら飲んでみるべきだろ!」
ギルダーがひょいと大きなコートからワイン瓶を出す。
瓶の中で、深紅のワインが血の様に輝いていた。
その輝きに、ヴァイスはつい『ドクロの船長』の事を思い出してしまった。
「さ、飲んでみようぜ」
またもや、どこからともなくタルを模したコップを出しワインを注ごうとする。
「ちょ、ちょっと待てよ。俺は駄目だって・・・」
「2年も前の事なんだろ、大丈夫なんじゃねぇのか?」
「う・・・」
「大人の味を知っとくのもいい勉強になるぞ?」
「うう・・・」
「少しだけなら、大丈夫だろ?」
「ううう・・・」
結局、折れたのはヴァイスの方だった。
3口まで、という約束でワインを注いでもらった。
「じゃ・・・いただきます」
まず1口目。
深紅の液体は冷たいのに、喉を通った瞬間カッと燃え上がった。
たった1口なのに、ヴァイスはジョッキ一杯で飲んだかのような息を吐く。
「どうだ?」
「なんか・・・すごい喉が焼けた感じ・・・」
「じゃあ2口目」
「ん・・・」
2口目を飲む。
今度は喉を焼かれる前に味を感じた。
ブドウの甘味と穀物のアルコールが混ざった舌を弾くような味。
まずい、というほどのものでもなかった。
まずさならオーシャンニガメロンの方が上を行っている。
「うーん・・・まだおいしいとは言えないけど、これなら飲めるかも」
「じゃあ全部飲んでみるか?」
「それはよしとくぜ、酔っ払ったらみっともない」
「一度べろんべろんになるまで酔って限界を知るのが大人だぜ」
「もう1回べろんべろんになってるからいいって・・・」
べろんべろんというか。記憶消去型の酔い方をしただけだが。
ヴァイスは深紅のワインに視線を落とし、最後の一口を飲む。
2口分のアルコールが3口分と混ざって、胃の中がカッと燃えた。
「・・・っぅあ・・・!」
「どうした、まさかもう酔いが回ったのか?」
ハハハ、とギルダーは笑うがヴァイスの様子はおかしかった。
つまる所、ギルダーのその『まさか』になったのだ。
「ギルダー・・・」
「ん?」
ギルダーを見たまま、ふらっとヴァイスの身体が倒れる。
「おおぃ!?ヴァイス!」
ギルダーは慌てて席を立ち、ヴァイスの身体を支えた。
ヴァイスは混乱した時の様な顔でギルダーを見る。
その顔は妙に艶やかな桃色に色づいていた。
「ふぁ・・・ギルダァ〜・・・」
「・・・もしかして、親父さんが酒飲むなって言ったのはこのせいか」
誘い上戸、絡まれ上戸とでも言えばいいのだろうか。
これまた、珍しい酔い方である。
「本当におもしれぇな、ヴァイス」
当のヴァイスはほんわ〜とした顔でギルダーを見詰めている。
普通の状態で見れば馬鹿面だが、今はその顔が誘っているようにしか見えない。
「予定よかちっと早いけど、かまわねぇよな」
ギルダーはヴァイスを抱えると、そっとべッドの上に降ろした。
ヴァイスはされるがままに、というか何をされてるのかも分からないまま上を見ていた。
ぼんやりと上を見ている間にスカーフは取られ、服は剥ぎ取られていく。
「ん、ぁ〜・・・・・・?」
「もう少し大人しくしてな」
ゴーグルを取られた所でヴァイスの視線はギルダーに戻る。
戻るとは言っても、とろんとしたポピーレッド、ひなげしの花色の瞳の事。
本当にギルダーを見ているのかどうかも怪しい。
ギルダーはその間に、自らのコートやスカーフやらをその辺に放り出す。
「ヴァイス・・・」
ちゅ、とギルダーがヴァイスと唇を重ねる。
ヴァイスも口付けされたいることに気付いたのか、ゆっくりと瞳を閉じた。
「ん・・・ふ・・・ぅ・・・」
前とは違い、ゆっくりと味わうような舌の動き。
大胆に角度を変えて、何度も唇を貪る。
存分に舌を絡ませた後、銀糸を引いて唇を離した。
「は・・・ぁ・・・っン・・・」
「気持ちいいか、ヴァイス?」
ギルダーは身体をずらし、ヴァイスの首筋から降下しながら点々と赤い跡と残す。
落とす最中、あるポイントでヴァイスは身震いした。
それを見落とすたらし船長、もとい、ギルダー様ではない。
「ここか?」
ヴァイスが感じた場所に唇を落とす。
ヴァイスは切なげな声を上げて反応した。
「あっぁ!・・・やぁ・・・・・」
ギルダーは楽しそうにヴァイスの様子を見ながら、その胸に顔を埋めた。
胸の突起の片方を口に含み、もう片方を指で弄る。
その感覚にびくっとヴァイスの身体が跳ねた。
「あ、・・・ん・・・っ」
左胸の突起を舌が叩き、もう反対を爪が弾く。
ヴァイスはじれったい感覚に首を振って、湧き上がる熱を散らそうとした。
実際、散るどころか上昇していくばかりなのだが。
「は・・・あ・・・ぁっ・・・」
「ん・・・そろそろか」
ギルダーはぱっと身体を離し、ヴァイスの様子を見詰める。
ヴァイスは急になくなった刺激に物足りないような顔でギルダーを見詰め返した、瞬間。
「・・・っア、あああぁぁっ・・・!?」
大きくヴァイスの身体が痙攣を起こした。
四肢を震わせ、呼吸が見る見るうちに崩れていく。
ギルダーはその様子を温かく見守った。
「ふぁ、あ、ぁ・・・っ」
「ヴァイス、ワインでも飲んで落ち着くか?」
嘲るようにギルダーは言うが、ヴァイスに答えられるわけが無い。
ギルダーはベッドから離れ、まだ残っていたワインのコップを持ってくる。
ギルダーはそれを口に含むと、ヴァイスの口に流し込んだ。
「んっ・・くっ・・・ぅ・・・」
ヴァイスの口の端から溢れた深紅のワインは、そのまま顎の下まで流れ落ちる。
ギルダーはそれを丁寧に指で拭い、その指をヴァイスの秘所に持っていく。
「・・やっ・・・ぁ・・・っ!」
ヴァイスは反射的に腰を浮かせた。
そのせいで余計指が中に入り込む。
それでも、前の時の様に嫌悪感はあまりないらしい。
酔いが手伝ってくれた事もあり、ヴァイスは大人しくギルダーの愛撫を受けた。
「は、ぁ・・・ん・・・ぅあ・・・っ!」
ヴァイスの秘所は時折ギルダーの指を締め付けながらも、何本も指を飲み込んでいく。
内をかき混ぜられ、意識さえ定かではないほどの快楽に落とされる。
「ま、こんなもんか・・・」
秘液で溢れた秘所から指を引き抜き、ギルダーはヴァイスを横に寝かせた。
そのままヴァイスの片足を持ち上げ、今までギルダーの指を咥えていた秘所に押し入る。
「・・・ひっ・・・あ゛あ゛あぁぁっ!!」
苦しそうなのに、快感を含んだヴァイスの声はギルダーの欲を煽る。
ギルダーはヴァイスの腰を掴み、浅い抜き差しを繰り返した。
その度に、ヴァイスの額に浮く汗が肌を伝い、シーツに落ちる。
「あ、あっ・・・ギル・・ダ・・・もっ・・と・・・」
甘くねだる言葉にギルダーは薄笑いを浮かべた。
ヴァイスもギルダーも、すでに快楽しか追っていない。
「お望みどおり、お姫様」
ギルダーはヴァイスの腰を掴むと深く貫いた。
前に知った、ヴァイスの特異的な身体の最奥部分。
触れればざらりとした粒の感触が返ってくる。
刺激すればするほど、ギルダーを締め付け快感を返した。
「ひ、ああぁぁっ!・・・やっ・・・そ・・こ・・・ダメ・・・・あ・・・っ!」
ヴァイスは縋る様にシーツを強く掴む。
ギルダーに好き勝手に揺さぶられながら、ヴァイスは艶やかな声を上げた。
「っああ!・・・ギル・・・ダァ・・・っ・・・ぁ・・ん・・・!」
「っ・・・ヴァイス・・・・!」
ヴァイスの内を擦る粘着質な水音と、ベッドが激しく軋む音が部屋に響く。
ギルダーが貫くたびに、ヴァイスは肺を締め付けらけ呼吸を乱す。
「・・ああぁっ・・・・・やぁっ・・・・・っも・・・イクっ・・・!」
「は・・・・・・俺もだ・・・」
ギルダーはそう呟くと、ヴァイスを乱暴にシーツに縫いつけ最奥を貫いた。
「アっ、あぅんっ・・・っあ゛あ゛あぁぁぁァッッ!!」
蕩けるような快楽が2人の全身を通り抜ける。
ヴァイスは一際高い嬌声を上げると、糸が切れた様に脱力した。
ギルダーも一足遅れてヴァイスの内に放つ。
「っは・・・ぁ・・・ギル・・・ダ・・・」
ヴァイスはギルダーの熱を感じながら、眠る様にベッドに沈んだ。
ギルダーは気絶したヴァイスから自分のものを引き抜くと、いつもの様にパイプをふかす。
「・・・こうなるって知ってたら、わざわざ媚薬を混ぜてくる必要が無かったな」
テーブルの上のワインを見ながら、ギルダーは苦笑いを浮かべた。
窓から温かい日差しと風が吹き込む。
風は朝の清々しい香りを運んで、ヴァイスの髪を撫でた。
「ん・・・・?」
ぼんやりと目を開けば、ダイン・・・父親の絵が目に入る。
身を起こそうとして、ヴァイスは腰に鈍い感覚に眉を顰めた。
次いで頭に鐘の様な音が響く。
「・・・うぁ・・・俺、昨日どうしたんだっけ・・・?」
確かギルダーと話して。
その後ワインを飲んで。
それから・・・何だっけ?
「・・・ま、いいか」
シーツを捲った瞬間、下着しか身に着けていない自分に『?』を浮かべた。
「アレ・・・・?なんだこの赤い痕・・・虫にでも刺されたのかな・・・?」
とにかく、服を着ようとして、ふと煙の匂いが着いている事に気付いた。
「・・・アレ?」
ヴァイスは首を捻りながらも、そのまま服を着る。
移り香するほどギルダーと一緒に居ただろうかと思ったが、気にしない事にした。
ワインで酔ったせいで、ほとんど何も覚えていない。
「・・・さてと、デルフィナスの調子を見てくるか!」
気持ちのよい風を全身に浴びながら、ヴァイスは元気良く船に向かう。
その頃嵐の男は、すでに船の傍でヴァイスを待っていた。
何もそ知らぬと言った顔で、風の様に飄々としながら。
fin.
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