風呂から上がったクロノアはそのままベッドの前で立ち尽くした。
ベッドの上ではすでにガンツが横になっている。
外を向いててくれたらいいのに、生憎内側に向いて眠っていた。
クロノアは思案した後、諦めてそこに身を滑り込ませた。
起こさないようにそっとシーツの下に潜り、枕に向かって頭を出す。
すぐ横を見ればガンツの顔があった。
「(ガンツも・・あの人に狙われてたよね・・・)」
眠っている彼の顔は、美形の部類に入る。
眠っているせいかいつもよりやや幼く見える顔も整っている。
乱暴だけど頼りになるときもあって。
それが他の人に取られてしまったら。
取られてしまったら?
「・・・っ!」
ぱっとクロノアの顔が赤く染まる。
ガンツは自分のものじゃない。
あんな行為をしたとは言えコイビトでもない。
仲間、仲間なんだ。
この気持ちは仲間を取られたら困るから。
きっとそういうものに違いない。
「・・・・・・・・・そう、だよね」
ガンツがどう自分を見ているのかはわからない。
けれど、少しでも認めてくれるのなら。
じっとガンツの顔を眺める。
薄開きの唇に目が付いた。
「・・・・・・・・ん」
自分の唇を寄せて、空気を伝えるような震えた口付けを施す。
呼吸が苦しくなった頃に唇を放し、頭を後ろに引いた。
ほぅ・・・と緊張から解けた吐息を漏らしてそのままガンツと反対の方に向く。
そのまま瞳を閉じて穏やかな眠りの世界に落ちるつもりだった。
だが。
「あっ!?」
ぐいっと耳を引張られ強制的にガンツの方に向かされる。
同時にベッドサイドの小さなライトが点いて彼の顔がはっきりと見えた。
「今・・・何してやがった?」
「え、な、何もっ・・・やっ!」
より強く引っ張られとうとう組み敷かれてしまう。
弱い明かりにガンツの毛並みが白く光る。
その上の青い瞳は、獲物を捕らえた獣のそれと同じだった。
「クロノア・・・嘘吐くなよ」
低い声で囁かれ、クロノアはぞくっと背筋に冷たい汗を流した。
ごそ、と無遠慮に寝巻きの中に手を突っ込まれる。
「ガ、ガンツ・・・ボク・・・」
「ったく・・・何もしなきゃ、こっちもするつもりじゃなかったンだけどな」
戸惑うクロノアにガンツが口付ける。
歯列を割って舌を絡める、あの行為。
ちょこちょこと逃げるクロノアの舌を逃がさないと言わんばかりにガンツが執拗に追いかけた。
濃厚で口の中のを蕩かすような口付けに次第にクロノアの抵抗が弱まっていく。
「ぅ・・ん・・・あ・・・ふ・・・・・・」
「起こした責任・・・取れよ」
クロノアの服をめくり上げ露わになった肉付きの薄い胸に舌を這わした。
ぐりぐりと舌先で胸の突起を押し潰され、反対の手は膨らんでもいない胸を揉む。
ツンと桃色に勃ち上がるそれを摘まれ、クロノアは甘い声を零した。
「ア・・・ぅんっ・・・ひ、ぅ・・・ガンツ・・ゥ・・・」
あの男とは違う自分を昂らせる掌。
クロノア自身求めていた淫らな熱だった。
「どうした、やけに積極的じゃねェか」
「せ、責任・・・取る、から・・・」
その手を、舌を止めないで。
クロノアは言葉にせずにガンツの腕を掴んで自らの胸に触れさせた。
誘い方としては失笑ものだが、ガンツはそれでも気を良くしたらしい。
起き上がって、クロノアの両腕を掴み背を起こさせる。
そのままベッドの頭の方に背をもたれ、クロノアを手招きした。
「何?」
「服脱いで後ろ向け、それからオレの上で四つん這いになりな」
さらりと言われた言葉はクロノアの顔を赤く染めるのに十分な理由だった。
言った本人はやれ、と手で急かしてくる。
「で、できない・・・」
クロノアが左右に首を振ると、ガンツは片眉を上げた。
トントントンと指で軽くベッドの彫刻を叩き、もう一度クロノアを見る。
まるで執行猶予の時間のようだった。
「できンだろ?」
「む、無理だよ・・・っ」
トントントン。
「できねェこたァない」
「だ、だって恥ずかしい・・・」
トントントン。
「やれよ」
「嫌―――」
トン。
今度は1回で終わり、ガンツの手が止まる。
次の瞬間、クロノアは強引にベッドに叩きつけられた。
「あぅっ!?」
「やれよ。ちゃんとできたらご褒美に―――」
頭の上から髪の毛に滑り落とすように低い声で囁かれる。
――死ぬほど気持ち良くしてやるぜ――
その言葉にずくん、と電流のように身体の芯が甘く響く。
クイ、と頭を押されクロノアは四つん這いにされた。
弱々しくガンツを振り返るも、眺める瞳は動かなかった。
「・・・っ・・・・・・ン、ぅ・・・」
ズボンの前を開いてちゅ、とガンツのものに口付ける。
小さな舌の上で感じる脈打つ熱に戸惑いながらも懸命に舌を這わす。
愛撫よりもその泣きそうにしながらも必死な顔にガンツはにやりと笑みを浮かべた。
「オレがいいって言うまで続けろ」
「っぁ・・・は・・・ぅう・・・・・・はにゃっ!」
言いながらガンツが乱暴にクロノアの衣服を剥ぎ取る。
急に感じた外気の寒さにふるっとクロノアが細みを震わせた。
ガンツは気にせずベッドサイドの棚からローションを取り出すとその中に指を浸す。
じゃぶじゃぶと溢れる音と甘い香りにクロノアの頭は麻痺していく。
「あ・・っ!やっ・・・ぁ・・・!!」
「オラ、ちゃんと集中しろ。もっと奥まで銜えな」
鼻に抜けるような声を出してクロノアはより深く銜え込んだ。
ガンツは濡れた指をクロノアの秘所にぴたりと這わす。
そのままぬるぬると奥まで指を一本、全て埋め込んでやればクロノアが息苦しそうに呼吸を乱した。
それを見ながら、ぐりっと内で指を擦りつけるように動かす。
「んんーっ!!」
たまに悪戯をして蠢く内壁を引っ掻けば途端に少女のような艶めかしい声を上げた。
「あ、ア・・・ガン、ツ・・・っ!」
びくびくと大腿が痺れ、指から滴るローションがその上を伝い落ちる。
「触ってもねェのにこっちもびしょびしょだな」
喉奥で笑われ、クロノアの瞳から雫が落ちた。
クロノアのものの先端から裏筋を指で掬うように撫でれば細腰が跳ねる。
「撫でただけでこっちの方、すごい締め付けてきたぜ?」
浅く抜き差しすれば、嗚咽交じりの嬌声を上げた。
「ガンツ、もう・・・やだぁ・・・っ!」
「へェ?何が嫌なんだ?」
わかっているくせに、と涙を溜めた金色の瞳が訴える。
ガンツは親指でその涙を拭うとクロノアの方を軽く突き飛ばした。
「ガ、ガンツ・・・・」
「ちゃんと強請ってみろよ。オマエが昂らせたモン挿れてやるぜ」
軽く熱を持ったガンツのものをヒクつく秘所に押し当てられクロノアはコク、と唾を呑んだ。
くらくらとクロノアの思考が揺れる。
彼が望む最良の答えを言わなければ、きっとこの意地悪な男は熱をくれない。
クロノアは震える指で解された自分の秘所を人差し指と中指で外に引っ張り小さく開いた。
自分から内部を見せる浅ましさと羞恥で顔が燃えるように赤くなる。
空いた手で引き裂きそうなぐらいシーツを掴み、懇願する。
「・・・ガン・・ツの・・・ちょう、だいっ・・・・っ・・・ひっ・・・アアアァァッ!!」
ズン!と一気に突き入れられクロノアは背を仰け反らせた。
急な圧迫感に息を詰まらせる。
それでもガンツは加減することなく、何度も奥に突き立てた。
「くぅ・・あんっ・・あふ・・や、ァア・・は、激し・・すぎ・・・っ!」
玉のような汗で濡れた背中をガンツの固い胸板が何度も滑る。
がくがくと揺さぶられガンツに腰を掴まれていなければベッドから転げ落ちそうなぐらいだった。
足の先がじんじんと痺れ、脳天を撃ち抜くような電流が身体を駆け巡る。
次第にそれは身体の一番敏感な場所に集まっていく。
「っも、だめ、出ちゃ・・ふっ・・ぅ・・・ッ!」
「まだだぜ」
くっと指で輪を作りクロノアの熱を堰き止めた。
「ひぃっ!!やだっやめてっ・・・放してぇっ!」
「オレのモンになれ、そしたら明日も、明後日もいつだって気持ちよくしてやるぜ?」
「あっ・・な、ぁ・・・なるっ!なるからぁっ・・だから・・・・早く、して・・ぇ・・ッ!!」
左右に首を振り涙を散らすクロノアにガンツは薄く微笑む。
右耳を掬うと軽く口付けた。
「じゃあ、ご褒美だ」
甘い言葉と共に強い衝動にギシッとベッドが軋む。
クロノアが艶めかしい声をひきりなしに上げ、何度もそのしなやかな肌に腰を打ち付けた。
恍惚に酔いしれ泣きじゃくりながら開放を求める声に、ゆるゆると戒めた指を解く。
そのままの勢いで狭く濡れた奥深くに突き立てた。
「っ・・・ひ・・・あああぁぁぁああぁッッ!!!」
「・・・ッ!!」
荒い呼吸に混ざって白いシーツに蜜液の水音が散る。
ガンツはクロノアのびくびくと震える身体をくたりとベッドに横たえた。
その反動か、散々荒らして赤く色付いた秘所からは白い筋が零れる。
淫猥な姿だったがすでに欲を吐き出したガンツからは些細なことにしか思えなかった。
「ん・・・・」
ちゃぷんという水音。
窓から緩やかに差し込む光と風。
それに運ばれる甘い桃の香り。
背中には温かい誰かの・・・誰かの―――。
「はにゃっ!?」
「起きたか」
「ガ、ガンツ!?」
白い湯気の中、背後からクロノアを抱えていたのはガンツだった。
ガンツが後始末したのだろう、クロノアの汚れたはずの身体はすっかりきれいになっている。
「身体――」
「え?」
人形のように抱きかかえられているせいでガンツの表情は見えない。
だが声色から察するに機嫌は悪くないようだった。
たっぷりと張られたお湯に浮かんでいるせいか、腹に回されたガンツの腕も重みを感じない。
「身体、痛くねぇか?」
「あ、うん。今は大丈夫」
「そうか」
ガンツが濡れた髪に口付けた。
優しい口付けに、クロノアは強張らせた身体から力を抜く。
それ以上会話は無かったが、いつになく甘い空気に包まれ穏やかな時間を味わった。
「行くぜ」
「うん!」
宿から青空の下へと出て、少し離れたところだろうか。
人が見えないのにしっぽが気配に反応する。
「ガンツ・・・」
「分かってる」
クロノアに後ろを向くなと手で合図しつつ、ガンツは腰に手を当てた。
「どうするの?」
「昨日の奴らだろ。とっとと逃げてりゃ良かったのにな」
ほんの数秒押し黙った後に互いの視線を絡ませる。
「逃げる?」
「バカ、オレが逃してやらねェンだよ」
ニヤリと牙を見せガンツが笑う。
その笑みに引かれるようにしてクロノアはガンツと後ろを振り向いた。
fin.
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