「大人しくしろよ?乱暴は嫌なんだろ?」
剥ぎ取った金の帯を放り投げ、ガンツは獣の顔でニヤリと笑った。
たじろいだ王はすでにその腕の中に収められている。
王の背中から伝わる柔らかいシーツの感触と強張る身体が相反する。
「悪いようにはしねェよ」
「……僕が言うのもなんだけどさ、ほんと、心狭いよね」
ガンツが王に執着を見せるのは珍しい。
どこまで独占欲の強い男なのだと溜息を吐いた。
「隙間がなくてイイだろうが」
忠誠のキスのように大きな耳を持ち上げ白い毛の部分に口付ける。
びくりとそれだけで反応を返す王が可愛らしい。
「耳、冷てェな」
はむはむと甘噛みしながらゆっくりと王へ顔を近づけていく。
せり上がるぞわぞわしたものに首を振って王は拒んだ。
「も…やめ…」
「ヤダね」
骨まで軽く到達できそうな細い首に噛みつき舐める。
「ふぁ!!そんな勝手な…!」
「暴れンなって」
「そんな事言ったって…」
「初めてじゃねェんだし、イイだろ?」
初めて、という言葉に王の頬が赤く染まった。
あのひどく弾けるような快感は、まだ覚えている。
「い、嫌…じゃないけど……」
「何か不満でもあンのかよ?」
じれったい王の首に吸いつき、ガンツは赤い跡を並べていく。
「ん…だって、痛いし…」
「じゃあ酷くはしねェ。あんまり痛かったら止めてやる」
「ホント…?」
「ああ。それなら問題無ェだろ?」
取引を交わして王の緊張を解そうと鎖骨に唇を寄せた。
「っ……う、ん…」
「じっとしてろよ」
ぎゅっと目を瞑る王の四肢を暴れられないようさりげなく拘束していく。
ちら、と王が片目を開いた時にはお互いに服は無く、足の間にはガンツが入り込んでいた。
「んっ…!」
「まだ痛くないだろ」
薄紅色の野苺みたいな胸の突起を啄んで口に含む。
舌で転がし吸いたてれば王の開けた大腿に力が篭った。
「…少し、身体の緊張を解いてもらいてェんだがな」
「そんな事言われたって、反射的なものだから仕方ないよ…」
足は膝を押されてもぽよんと反動でガンツの腰を挟み込む。
ガンツは伝わってくる抵抗の証に苦笑した。
「ちょっと深く息してみろよ」
「……こう?」
腹を膨らませてへこませて、素直に深呼吸する。
「そうだ」
言いつつも反対側の実を指で摘み、指の間で押し潰した。
「やっ…!ひ、ぁ…」
「ホラ、呼吸は深くだ」
カリっと吸いついていた方のそれに歯を立てて叱る。
「っあ!ちょっと、痛いってば!」
「こんなに硬くしてるくせによく言うぜ」
指で摘んだ突起を優しく撫でてぐるりとその周囲に輪を描いた。
「ぁ…!!う…もう、やっぱり意地悪だ…」
「これでも優しい方だぜ」
「…んっ…う・・・嘘吐き…っ!」
「…あんまり可愛くねェ事言ってやがると酷くするぞ」
胸の突起を虐められる事から解放されたのもつかの間で、ガンツのが身体を下にずれていく。
「や、やだってば」
「じゃあこういう時の口の使い方は気を付けねェとな」
ぱくりとガンツの口に銜えられた王は途端に悲鳴を上げた。
慌てて口に手を当てるも、ガンツはそんな王を見上げて笑うだけである。
「そんなんで声が聞こえなくなるって本気で思ってンのか?」
「ふ、ぁ……!…だって…」
「気持ち良いだろ?」
くちゅくちゅと舌で弄びながら問い掛ければ、気を紛らわせる様に王は視線を彷徨わせた。
ガンツの口の中で蜜を垂らしている自身を直視できないのだ。
「呼吸は止めンなよ」
かぽ、と奥まで飲み込まれて無意識に王の腰が揺れる。
喉の奥まで銜えて欲しそうな淫らな腰の動きと、もう止めてと言いたげにガンツの頭を押さえる手。
相反する2つの動きにガンツは満足そうに口の端を歪めた。
「くぁ…や、やだ……体が、熱い…!」
「これで冷えてもらっても困るぜ」
「あっ!もぅ…な、んで僕ばっかり恥ずかしい思いしなきゃいけないのさ…!」
ぽた、と王の深紅の瞳からひとつ、耐えきれなかった雫が零れる。
真赤になって鼻を啜る王が幼子のようで敵わない、とガンツはそれから口を離した。
「そりゃ、テメェはオレのにこんな事できねェだろ?」
「…………」
「やりてェならオレは構わねェぜ」
「…仕方が分かれば、出来なくはない…のかな」
情事の最中に真剣に悩みだした王に脈ありだと、ガンツはその身体を引き起こす。
「じゃあやってみろよ、教えてやるぜ」
「あ…う、うん……」
「口、あーんするみたいに開けてろ」
王の後頭部を掴んでグイと自分のものの所に持っていった。
大きく開いた王の唇から滑らすように含ませて、半分ほど押し込んだ所で止まる。
「ん…ふ・・・ぅ」
小さな舌が行き場をなくしたように何度もガンツのものの裏筋を叩いた。
「舌当てて頭を上下に動かしな」
「ん…」
戸惑い、ぎこちなく頭を上下させる。
ガンツは王の頭を撫でながら僅かに角度を調節してじわじわと含ませる部分を深くしていった。
王の潤みきった瞳からまた一つ涙が零れて開きっぱなしの口の中に溶けていく。
「………んぅ!?」
先走りと唾液で濡れたせいか、ずるりと喉の奥壁にまで入り込んでしまった。
驚いた王がきゅっと喉奥で締め上げ、思わずガンツの顔が歪む。
だが王が咽ながらガンツのものを吐き出したせいで一瞬の快感に終わってしまった。
「ッ…大丈夫か?」
「けほっ……大丈夫…」
はー、と涙目で告げる王に無理をさせたかと優しく唇を拭ってやる。
「…今ぐらい奥まで飲んでくれりゃ結構気持ちいいンだけどな」
「いいよ、どうせ下手だも…っわ!」
ぷい、とそっぽを向いた王を再び引き倒した。
先程途中で止めてしまった王への口淫を再開させる。
「今日の所はお手本だけだな」
「ひっ…あ……!」
ガンツのものを銜えていた時にもやはり身体は興奮していたのか、王のものは熱い。
先端に歯を立てて軽くぐりぐりと弄れば細い背が仰け反った。
「っあ…やだっ…ほんとに、出る…!」
「ホラ、イけよ」
「う、あ…や、ぁぁ――!!」
じゅるる、と強く吸われて王はあっけなく蜜液を吐いてしまう。
頭を左右に振りながらも羞恥を逃がせない姿にガンツの欲が反応した。
「……結局、僕一人が恥ずかしい思いするんじゃん…」
「…恥ずかしいのはまだこれからだぜ」
王の腰を持ち上げ、 濡れた自分の唇を今度は王の秘所に寄せる。
ぴちゃっと白い蜜液を絡めた舌で緋肉の後腔を責めた。
「――あ、やだやめて!…ほんとにやだ!」
「痛いのは嫌なんだろ?」
「や、舌の方がやだっ!指、指でいいからぁ…っ!!」
悲鳴の嘆願にやれやれとガンツは唇を離す。
「……次したら、スフィアしてやるからね…」
「前も似たような事言ってたな。じゃあじっとしとけよ」
濡らした指で王の秘所に触れ、くっと1本、指を押し入れた。
ぬとりと熱く蠢き、一定の間隔で締め付けてくる内部に様子を見ながら手首を回す。
「っう……」
「痛いか?」
「変な感じはするけど…痛くは、ないよ」
「そうか。じゃもう一本増やすぜ」
「った!!ちょっと、ゆっくり…やぁっ!」
隙間を縫うようにして2本目の指が押し込まれ、思わず王の腹に力が入ってしまう。
きゅっと押し返される感触が蹂躙する指先から伝わった。
不意に悪戯心が湧き上がり、王の前に反対の手を差し出す。
「人差し指と中指、握ってみろよ」
「え…?」
言われた通りシーツから手を離して王の細い指がガンツの無骨な指を握る。
幼子が親と手を繋ぐような仕草だ。これがどうしたというのだろう。
きょとんとする王にガンツがにやりと美形に見合った艶めかしい笑顔で囁いた。
「…今同じモンがテメェの内に入ってンだぜ…?」
「っば、馬鹿!」
次第に解けていく秘所にとうとう虐める指が3本になる。
「ひぁ!!あ…んぅ……ば、かぁ…っ!」
「こんな所ぐずぐずにしといてよく軽口叩きやがるな」
「っきみが…ふぁ…意地悪ばっかり、する…から、でしょ……!」
まるでいじめっ子だと非難する王にガンツは喉の奥で笑った。
普段ツンと澄まして人を見下すような王が泣いてよがって足を開いていれば。
誰だって少しは苛めたくもなるだろう。
「さァて、こっからが本番だぜ」
「……ッ!!」
指を引き抜かれ、代わりに感じた熱に王の身体が硬直する。
「力入れンなって。辛くなるぜ」
「も、もう入れるの…?ほら、もっと何か話でも…」
目を泳がせながら逃げようとする腰を捕らえて口付けた。
挿入の前に物怖じする事は分かっているため、いっそ言葉を紡ぐ口を封じてしまう。
「もうその手は食わねェぜ。黙ってろ…」
口付けたまま、ぐっと腰を押し進めた。
「っ!!んぅ〜〜!!!」
「…ン…」
根元まで一気に飲み込まされ、王がガンツの肩を押し戻そうともがく。
悲鳴もままならないまま突き上げられ、ぽたぽたと涙を零した。
「ふ…ん、ん……」
「ッは…相変わらずキツイな…」
「い、たい…痛いよ…」
腹をえぐる鈍痛が細い王には過酷な刺激なのだろう。
赤い舌を覗かせて乱れた呼吸を繰り返している。
「悪ィ、こっちで気ィ紛らわせといてくれ」
「っあ…やぁ…!」
王のものに手を伸ばし、痛みで萎えたそれに刺激を与えた。
跳ねる身体を押さえつけて強引にも快楽を与えていく。
泣きながら自分の手の甲を噛む王に、手の動きを緩やかにしてガンツは自分の肩を差し出した。
「手は噛むな。オレの肩貸してやるから」
「う…も、訳、分かんなくなる…」
肩に歯を立ててすがる王を宥めてゆっくりと腰を揺らす。
「駄目…頭の中が…おかしくなりそうで…」
「おかしくなったっていいだろ?オレも同じだ」
「ひゃっ…!じ、自分が自分でなくなりそうな感覚が…怖い、から」
「オレと繋がってるンだぜ?今のテメェはオレのモンだ…」
口に出せばよりその欲が強くなった。
もっと、と王の全てを貪欲に食らおうとする。
激しくなる突き上げに王は喘ぎの混ざった息を絶え絶えに、薄く笑った。
「……独占欲、丸出し…」
「…嫌いじゃねェだろ?」
「あ、あ…も、ひぁぁ!!…っぐぅ…!」
肩に食い込む綺麗に並んだ歯がぎりっと締まり、ガンツに痛みを刻む。
血が滲みそうな勢いに王が今どれだけ必死なのか伝わって、肩の肉を食わせる男はニヤリと笑った。
「ン…イイぜ…」
「あっ、あ、はぁ…んっ!」
涎を零し、涙を滲ませて何度も穿たれ王の身体ががくがくと震え出した。
最奥まで貫かれ、噛み殺しきれない嬌声と滑るじゅぷじゅぷと粘着質な水音が耳を叩く。
「あ!あぁぁっ――!!」
「……カナ」
「や、あぁ!!し、にが――…ガンツ!」
互いの名を呼んだ瞬間、同時に熱い蜜の飛沫を感じた。
腰から目の裏にかけて全てを焼き切るような快感が通り抜ける。
一瞬気絶をしたせいで王が目覚めた時は唇はガンツの肩から離れていた。
あれほど腹を圧迫していたものも既に引き抜かれ、濡れた感覚だけが快楽の溝に残っている。
「う…は、あぁ……」
「大丈夫か?」
「…体中、くたくただよ…」
とろりとした瞳のまま、可愛らしい悪態にガンツは思わず苦笑した。
大きく息を吐いてまだ甘さを残す吐息を溜息のように吐き出す。
「……寝てろ。後始末はやってやるから」
いつクロノアに戻るかわからない。
もう少し王と話していたいが、これ以上無理はできないだろうと優しく浅緑の髪を撫でた。
「何だか、優しいね…変な感じ」
「優しいのがイイんだろ?」
からかうように告げれば王は顔を赤く染めて視線を逸らしてしまう。
横を向いたついでに米神に口付け、細い肩を抱いた。
「…また出て来いよ」
静かに頷いた後、ぽつりと雫の零れるような音で囁く。
「…きみにも、夢見る旅人の資質があれば…よかったのにね」
「ン……?」
「…何でもない」
「そうか」
カーテンも閉めなかった窓からは月が見えていた。
もう夜だと、時間の経過を月光が教えてくれる。
「…ねぇ、死神」
「なんだ?」
「僕…砂漠を見に行ってみたい。ルーナティアに、砂漠はないから…」
両腕を宙で漂わせ、泳ぐように掌を天井へ向けた。
ガンツは王のふらふらする腕を取り、身体ごと抱き込んでやる。
「いいぜ。見せてやるよ」
「後、ロケットとか、港町とか…見た事ないもの、沢山…」
「全部見せてやるよ。クロノアが見たものだって、全部な…」
「…うん……」
うつらうつらと瞼を閉じていく王を壊れもののように抱き締め、クロノアに戻るのを待つ。
ガンツは腕の中の温もりの変化がない事に、嬉しくもひどく切ない気持になった。
翌朝、なぜだか身体が痛いというクロノアをうまく丸めこんで、ガンツは砂漠に向かう。
いつもならば風のように走り抜けるバイクをその日ばかりは緩やかに進ませた。
fin.
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