+理由なんていりませんただ好きなんです+



スマデラの世界。
毎日毎日戦ってはいるのだが、この世界は平和である。
この毎日毎日任務や金稼ぎに明け暮れる青年にとっては。

「はぁ・・・平和だな〜・・・」

フォックスは一人、公園のベンチに座っていた。
公園といってもとても広く、大きな池や小さな売店があるほど整理された公園。
数十メートル先には散歩をしている人もちらほら見かける。

「宇宙に居た時とはやっぱ違うなぁ」

流れる風も、重力によって地面に押し付けられる感覚も、宇宙とは違う。
時にはこうして『自然』なものを感じてみるのもいい。

ふと、フォックスの中にあの宇宙での光景が浮かんでくる。

遊撃隊として戦いの真っ只中に突っ込んだこと。
戦闘に中仲間を助けたこと、助けられたこと。
ライバルであるウルフにあって撃ち合いをしたこと。
大音量で音楽聴いてたらペッピーに怒られたこと。

みんなが綺麗だと思っている空の上では、さまざまな事が起きている。

「地上から見たらこんなに平和だなんてな・・・」

もちろん地上でも嬉しいことや悲しいことは起きる。
それはどこの世界でも同じだ。

ぴろりろ、ぴろりん♪と公園の時計台からオルゴールのメロディが流れてくる。
どうやらもう11時になったらしい。朝の散歩はこれぐらいにしておくのが妥当だろう。

「そろそろ帰るか」

昼飯はなんだろうかと考えながらフォックスはベンチから腰を上げる。
その時、横から声が聞こえた。

「フォックスさん?」
「あ・・・リンク」
「どうしたんですこんな所で?誰かと待ち合わせですか?」

リンクは少しきょとついた顔でフォックスに話しかけてきた。
それもそうだろう。男が一人、公園のベンチで暇そうにぼーっとしていたのだから。

「いや、ただの散歩。リンクは?」
「今日の御飯の材料買いに行こうと思って。この公園通って行くと近いんですよ」
「へぇ。・・・いつも悪いな」

いつも食事を作るのはリンクである。
スマデラには女性もいるのだが、料理はあまり上出来とはいえない。
むしろこれは謎の物体Xかと言いたくなる様なモノを作ったりする。
それに比べてリンクは男の料理だと思えないほど丁寧で上手い料理を作る。
それだけ自活能力が高いということなのだ。

「いいんですよ。私も皆さんがおいしいって言ってくれると嬉しいんです」

リンクはにこにこと笑いながら言ってのける。
大人数+大食漢がここにはいるのだ。作る量もハンパではないというのに。

「リンクが勇者じゃなかったら俺のチームに入って欲しいなぁ・・・・・なーんて」

ぽろっとフォックスから出た言葉に、リンクは少し顔が赤く染めた。

「リンクの料理なら絶対スリッピーやペッピーも喜ぶな」
「ハハ、そこまで褒めてもらうと恐縮ですよ」
「いやホントだって。俺リンクの料理は好きだ」

ぼっとリンクの顔に赤みが増す。
これには流石に気付いたフォックスがそんなに照れなくても、と笑いながら言う。

「あ、や、そ・・そうじゃなくて・・その・・」
「ん??・・・あ、リンク買い物の途中だったんだろ?手伝うぜ」
「あ、ありがとうございます」

まだ頬を染めたままだがリンクが言った。




「今日は何がいいですかね?」
「んー俺は冷麺がいいかな」
「じゃあお昼は冷麺にしましょう」

二人は食材を買いに歩き始める。
歩き始めて少し経った時、

「その、フォックスさん」
「ん?」
「私の料理のどこが好きですか?」
「へ?ん〜・・・なんだろな」

フォックスは腕を組んで考える。
真剣に悩むフォックスの様子に、リンクは不安げに眉を顰めた。

「・・・好きなところ・・・ありませんか?」
「俺はあんまり舌が肥えてるほうじゃないから偉そうなことは言えないんだけど」
「なんとなくでもいいんですけど・・・」

じゃあ、とフォックスはリンクの方に顔を向けた。

「アレかな。リンクの真心が篭ってるし、おいしい。だから好きなのかな」
「そうですか・・・」
「なんか理由になってなくて悪い」

ぴこぴこと動くフォックスの耳が少し下を向く。
それを見たリンクはいえいえ、と笑って言い返した。

「おいしいと言ってくれただけで私は嬉しいですよ」
「そうか」

その言葉にフォックスも少し安心したのか耳がまた上に上がる。
分かりやすいなぁ、と、リンクは心の中で呟いた。



その夜の晩御飯はちょっと豪華だった。
リンク曰く、少し腕によりを掛けてみたんだとか。


















                          fin.

ブラウザバックでお戻りください