+HOT!HOT!HOT!+
ぽてん。
そんな音が似合う。
円形の机に顔を乗せ、それに挟まれた布団を胸まで被る。
机の下からはぬくぬく光線が出ており、非常に温かい。
それのせいか、いつもの凛としたきれいな顔が今では溶けそうな笑みを浮かべていた。
「リンク・・・気に入った?」
「はい・・・フォックスさん、ありがとうございます・・・」
向かい側でみかんを剥きつつ問えば、顔と同じ心持ちの声が返ってくる。
ここまでご満悦になってもらえるとは思わず、出してきてよかったと一人心の中で呟いた。
時間はやや遡り、昨日の夜。
風呂上りに水を飲もうと台所に寄った時だった。
白い蛍光灯の下、すでに寝たかと思っていたリンクがいたのだ。
「フォックスさん」
「リンク、もう寝たんじゃなかったのか?」
「寒くて目が覚めてしまったんです」
普段丈夫な彼だけに、こんなことを言うのは珍しい。
風邪じゃないかと疑ってみたが、そんな兆しはなかった。
見れば彼の手には温めたミルクがカップから湯気を立ち昇らせている。
「寒い・・・か、まぁちょっと今日は冷えるなぁ」
窓に結露ができるほどだ。
外気の冷たさは大分厳しいものなのだろう。
雪こそ降っていないものの、息を吐けば白く染まる。
「どうも落ち着かなくて・・・」
ぽつぽつと台所で話しつつ、よくよく聞いてみれば冷えるのは足だという。
「旅の時ほど多く歩かなくなったせいでしょうか」
「うーん・・・男の人も冷え性にはなるっていうけどなぁ」
医者じゃないので何とも言えなかったが、確かに冷えは心地よいものではない。
くるくると頭を回し、ピンと思い立ったのがこのコタツだった。
だがさすがに夜中に探し出すわけにいかなかったので、その夜は別の方法で暖を取ったのだが。
ともあれコタツを出して早1時間。
ごろごろと喉でも鳴らしそうな勢いで堪能するリンクに、こちらとしても顔が緩んでしまう。
「(可愛いなぁ・・・)」
「フォックスさん」
「ん、あ、な、何だ?」
「?・・・あの、ちょっと熱いのですが」
「ああ、じゃあちょっと温度下げるな」
ちょい、と布団を持ち上げ手を突っ込み中を探る。
温度調節のネジは内蔵型なので、直接中を探らなくてはならない。
ごそごそとしばらく探るがいまいち当たりが来ない。
「うーん・・・ちょっと中潜ってくる」
「すいません」
「いいよ。あ、ちょっと足左に置いて・・・」
自分の足を出し、もそっと頭を布団の中に突っ込む。
むわぁっと来る熱気に顔が火照ってくるのが分かった。
酸欠になりそう、などと思いつつ赤色に照らされた中を見る。
ネジはちょうど自分の反対側、リンクの面の所に設置されていた。
「(見つからないはずだよなー)」
ネジを掴もうとより上体を乗り入れたとき、リンクの足をくすぐってしまったらしい。
布団の向こう側から妙な声が聞こえた。
何と言っているのか聞こえなかったが、とにかく慌てているのだけは突っ込まれている足の動きから窺い知れた。
ぐっと腕を伸ばしてネジを掴む。
その瞬間、今度ははっきりと焦る声が聞こえた。
途端にじたばたと暴れ出す足を今度はこちらが慌てて抑え込む。
「フォックスさんっ!?」
がばっと布団を捲ったリンクと、ちょうど目が合った。
「な、何してるんですか!?」
「何って・・・温度調節だけど」
「そうじゃなくて・・その・・・手・・・」
「手?」
はた、と自分の手を見たが別段変った所は無い。
よくよく周りをよく見ると、あ、と小さく声を上げてすぐに伸ばした腕を引っ込めた。
「・・・ごめん」
「・・・・・いえ」
小指の先ががリンクのチェニックの裾を引っ掛けていたらしい。
男とは言えいきなり裾を捲られれば驚くだろう。
タイツをピチピチに纏った彼の足はにじにじと無礼者を警戒しているように見えた。
今度はリンクの服に気を付けながらネジを回し、一番弱い所に設定する。
「はい、これでいい」
「あ、ありがとうございます・・・」
ぴったりと閉じられた足がまだ僅かに緊張しているのが分かる。
そんなに警戒しなくてもと理不尽に傷ついた気分になり、その白い足の上に頭を乗せた。
「フォックスさんっ!」
「膝枕」
「た、体勢が悪いです!」
それはそうだろう。
正面から乗り上がってきたため、もしリンクが足を開けばこの頭はずるりと彼の股間に落ちてしまうのだ。
リンクが横を向いて、その上に頭を乗らせてもらったことはあったがこういう風にしたのは初めてである。
「じゃあリンクも入る?」
さらに乗り上げてリンクの上半身を床に着けてしまう。
戸惑いながらではあったが、チェニックの裾を抑えゆるゆるとこたつの中に戻ってきた。
同時にこちらも身体を乗り上げ、2人で同じ面に嵌っている形になる。
「はい」
狭いのと横になったのをこれ幸いと腕を差しだす。
リンクは仔猫のように身を寄せるとその腕に頭を乗せた。
「これなら上半身も温かいだろ?」
リンクの表情はよく見えないが、空色の瞳がかち合わないことから目を閉じているのが分かる。
こちらもリンクの体温を感じて、まったりと瞳を閉じた。
ぬくぬくとこたつとお互いの熱で暖を取っている。
ある意味動物的な暖の取り方だと頭の片隅で思いながら、腕にかかる重さに幸せを感じた。
「眠・・・」
リンクは特に動くこともなくじっとしている。
その心地良い暖かさにうとうとと眠り気が忍び寄ってくる。
ここはリンクの部屋、今日は特に予定もないためコタツから出る気もない。
少し眠るぐらいいいだろうとまどろみに意識を任せ始めたとき。
ちゅ、と唇に柔らかいものが触れた。
目を開く前に再度、軽い音が唇から洩れる。
「ん・・・」
緩やかに瞼を持ち上げればリンクが頬を染めてこちらを見詰めていた。
なんと可愛らしい安眠妨害。こういうのならいつでも歓迎する。
珍しく彼の方から自分を強請っているようだ。
「リンク?」
「あ、えっと・・・」
やってしまってから気付いたかのように、見開いた空色があちらこちらへ飛び交う。
「(可愛いなぁ・・・)」
ほんの少し前と同じことを思いつつ、金色の髪を分けてその額に口付けた。
唇に頭蓋の固さと肌肉の柔らかさが伝わりもっとすり寄っていたい気持ちになる。
寝ぼけた頭を揺すって口付けの雨を降らしていれば、リンクから再度呼びかけられた。
「フォックスさん、その・・・し、たいです」
「え?」
口付けを止めて聞き返せば若干潤んだ瞳が自分を見上げていた。
自室が各々あるため、同じ布団に入ることは夜の営みをする時ぐらいしかない。
コタツといえど布団、加えてこの密着度。
人肌に慣れないリンクは気持が高揚したのだろうか。
「(まだ昼過ぎだけど・・・いいや)」
据え膳食わぬは何とやら。
リンクの帽子を取り、その下の金糸へと指を滑らせた。
するりと耳の裏から首筋をくすぐれば、ぞくっと抱きこんだ身体を震わせる。
「っ、あ・・・!」
陶器の肌がコタツの熱ではないものからの熱で赤く染まっている。
無意識に誘っているように思わせることの多い彼だが、こうして直接強請られるのも嬉しい。
思いきり、それこそ夜が明くまで抱き通したいと思う時もなくはないが、それこそ自分が獣だと言っているようなもの。
リンクの体調に合わせて甘く優しくするのが一番だと考えている。
「リンク、胸元開くよ」
「あ、は、はい・・・」
クロスした紐を解いて白いシャツの前を開く。
平たい胸には昨日の名残の紅痕が残っていて、どうしょうもない笑みが零れた。
「痕・・・結構残ってる」
鎖骨を撫でながら耳元で囁くと、だって、ともどかしげな声が返ってくる。
顔を寄せ、リンクの下唇を舌で這いながら深く口付ければくぐもった声に変わった。
甘く柔らかい感触は食欲と性欲の両方を刺激させられる。
歯列を割り滑る粘膜を擦り合わせて互いの味を探り合った。
「ん・・・ふ、ぁ・・・・」
頃合いを見計らって唇を離す。
濡れた糸を引いて薄く開いたままの唇にもう一度、軽く口付けた。
「・・・ん」
震える長い睫毛に、瞳を閉じた顔もきれいだと内心惚気る。
それと同時にさて、これからどうするべきか頭を巡らす。
「(コタツの中でそんなに動けないし、かといって・・・)」
ふしだらな悩み事をした後、早々に決断をした。
手袋を外してコタツの上に放り投げる。
急に触れる外気に解放されるようなすっとした気持ち良さを感じつつ、リンクの肩に触れた。
「ちょっと向こう側向かすね」
自分に背を向けるようにリンクの身体を反転させ、チェニックの裾を捲り上げる。
そのまま腰骨の輪郭をなぞるようにしてタイツの中へと指を滑り込ませた。
ずるずると膝上までそれを降ろして置いておく。
昨日の残り、というか片付けるのが面倒で朝起きた時そのままポケットに突っ込んだスキン。
2枚ほど取り出して自分の前も寛げ、それの袋を噛み切る。
ひとつをリンクのものへ、もうひとつを自分のものへと手早く着けた。
「あ、ぁ・・・・っ!」
顔は見えないがリンクの焦った声が飛び越えてくる。
「指、冷たい?」
「だ、大丈夫・・です・・・」
手袋を外したばかりで冷たいはずはない。
互いのスキンからジェルを貰ってリンクの前に伸ばした手と自分のものに伸ばしていた手で秘所に触れた。
「あっ・・・ふぁ!・・や、フォックスさ・・・まだ・・・」
嫌々とリンクが首を振る。
確かに性急だが、こうも動けない場所にいるのならいっそ最初から加速して行為をした方がいい。
「大丈夫、リンク。ゆっくりするから」
両手の人差し指がくちゅと音を立てて秘所に潜り込む。
昨晩したせいか、いつもよりは幾許か柔らかく抵抗も少ない。
内にジェルを塗り込むようにして奥まで指を突き立てた。
「んぁ!・・う・・・く・・・・」
びくっとリンクの身体が大きく跳ねて瞬間的に指を締め付けられる。
奥まで触れた時に前立腺を擦ってしまったのだろう、彼の背中が段々と早く揺れ出した。
真っ赤になった長い耳に口で愛撫し、たまに青いピアスを噛む。
このピアスは大人の証なのだと、いつぞや彼が言っていた気がする。
大人と子どもの堺のつきにくくなってしまった自分の世界とでは大きな違いだと苦笑する。
ピアスをして大人になれるならば、もっと早くに、自分は。
「フォックス・・さん・・・?」
うっかり口の愛撫を止めたせいか振り返りはしないけれどもリンクから戸惑いの声が届く。
「リンク、指増やすよ」
ぐっと押し広げて挿れる指を増やした。
拡げた時に幾筋か秘液とジェルの混ざったものが彼の足の付け根を伝う。
左右の中指をプラスした計4本の圧迫に苦しそうな声が聞こえた。
「ごめん、苦しい?」
「平気・・です・・・」
いつもなら、指を増やす頃にはもう少し快楽に意識を落としている。
けれども今日はまだ大分理性が残っているようで声もひそやかだ。
もう少し我慢してくれ、と心で思いながら前から回した手の方の指で前立腺を擦り上げ、後ろからの手で奥を解いていく。
「んんっ・・!・・・ひ・・ぅく・・・・・っ」
抑えたリンクの声は逆に艶めかしい。
正直もうコタツがいらないぐらい2人とも熱くなっている。
だがベッドまで移動する時間すら惜しく、もっと熱く濡れた彼の秘所に入りたかった。
そう思えば思うほど我慢がならず、昂った自身を指を引き抜いた場所に当てる。
「リンク、もう・・・いい?」
駄目だと言われてもあまり待てる余裕はないのだけれど。
優しい恋人は小さな声で許しの言葉を与えてくれた。
「っあ、あ、んぁ・・・・・・ひゃ、あんッ!!」
「っ・・・リンク・・・・」
自分のものをほとんど彼の内に収めて一息吐く。
狭いけれど暖かくて柔らかくて、身体から幸せな気持ちが浸み渡ってくる。
しばらくは動かずに、自由な手でシャツの中に潜り込んでしっかり反応している胸の突起に触れた。
押して潰して、引っ張って弄り回せば、その刺激は抑えられた嬌声と内の収縮に反映される。
ここももう熱い、と突起を摘んで囁けば、動いていいと恥ずかしげな声で囁き返された。
「リンク、好きだよ」
耳を後ろに口付けしてゆっくりと腰を揺らす。
もっと動けるなら早く突き上げてしまいたいけれどそうもいかない。
「(たまには動かないのもいいか・・・)」
リンクの熱で浮かされかけた頭で遠くのことのように考える。
激しく揺さぶって腰を砕くわけにもいかない。
窓からは昼間の白い光が部屋に指している。
「(・・・ああ、まだ昼だったんだ)」
それでも冷静に戻ることはない。
昼だからなんだと、もはや獣に近い思考でリンクの身体を貪る。
夢中で揺すって彼の声で鼓膜を打って、淫らな行為に耽った。
「あっ・・あふ・・・っやぁ、ア、いぃ・・・・」
リンクの方もすっかり快感に溺れているらしい。
意味をなさない上に抑え切れられなくなっている声が可愛く思えて、胸にあった自分の手をするりと彼のものに添える。
スキンのつるりともぬるりとも言えない感触を指の腹で感じながらつ・・・と指で弱く触れた。
「フォ・・フォックスさ・・好・・・ぃ、好き・・です・・・ッあ、大き、ぁく・・・ッ!」
うわ言のような告白に彼の内に割り込んだ身体が返事を返す。
ドクンと跳ね上がったそれが血液を逆流させるようで、理性が擦り切れる音がした。
「リンク・・・。・・・・やっぱ、駄目だ」
「え・・・・?」
ずるりとリンクの内から自身を引き抜き、身体を起こす。
そのまま身体を抱き込み、コタツから脚力と腹筋を使って這い出した。
今まで上になっていたリンクの足を自分の左肩に掛けて、彼の身体を転がした。
中途半端な仰向けだが、これならリンクの顔がちゃんと見える。
突然の行動に何事かとリンクが驚愕の顔でこちらを見上げた。
「フォックスさん・・・・?」
「顔、やっぱり見たくて」
そう言った途端、リンクの顔がかぁぁと熟れていく。
自分に彼を満たすほどの愛情を持つことができればいいのだけれど。
きっとアダムとイヴにでもならない限りそんなことはできない。
世界に、彼と2人きりにでもならない限り。
臆病な自分を割り裂いてくる。
隣で待っててくれる。
「リンク、大好き」
誰よりも彼を愛しているけれど、きっとそこには誰よりも弱い自分がいる。
弱い自分が必死になって彼との愛情を守ろうと吠えているのだ。
「私も、です」
軽く唇を重ねて、リンクの頭が床に落ちる。
これだけで、何でもできそうな気持ちになるから幸せだ。
蕩けた空色の瞳にはすっかり水が溜まっていたが、それがとても美しい。
「フォックスさん・・・動い、て・・・」
「ん・・・」
疼いていたのだろう、リンクの内壁は少し動かしただけで喜んで自分のものに絡みつく。
「ん、あ・・・はぅ・・・・ひゃぅ!」
中断した熱を取り戻すように穿つ。
濡れた内に温かく締め付けられてしっぽの先までぞくりと快感が走った。
「気持ちいい、リンクの内・・・」
「もっと・・・内まで・・ぇ・・・奥・・まで・・もっとっ!」
鼓膜を溶かすような甘い声で強請られたら、しないわけにはいかない。
ガクガクと震えるリンクの足を押さえて、激しく動いた。
速まる心拍数に合わせるように、リンクの動きに合わせて熱ある粘膜を擦り合わせる。
「あ、やっ・・もぅっ・・駄目・・・・・ふぁ・・・・・ア、アァ・・フォックスさ・・もぅ・・駄目・・・っ!!・」
「一緒に、な」
汗が頬を伝ってリンクの胸に落ちる。
視界が白くフラッシュして、お互いの熱が弾けた。
「リンク〜・・・」
「・・・・・はい・・・・・」
「俺がやり過ぎました、だから出てきてくれって・・・」
「・・・会わせる顔が、ありません・・・」
ぼそぼそと地を這うような声につい苦笑する。
行為の後始末が終わり、意識のはっきりしてきたリンクは気がつくや否やコタツの中に潜り込んだ。
甲羅から出てこないノコノコのように、腕一本コタツから出てこない。
「リンク〜・・・」
「放っておいてくださいぃ・・・」
「出てきてくれって」
きっと赤外線より真っ赤な顔をしているであろう彼の顔が、今とっても見たいから。
温かい気持ちに満たされながらコタツの中に勢いよく手を突っ込んだ。
fin.