+誰にもいえない、こんなことは。そう、あなたにも+
背徳感、とでもいうのだろうか。
悪い事をしているわけじゃないけど、この気持ちには背徳感が付き纏う。
ダイナソープラネットの任務を終えた、お土産に。
新しく仲間になったクリスタルと、帰って来たファルコ。
彼はまだ寝ている。
俺は名前を呼んだ。
彼は薄らと目を開ける。
「・・・なんだ?フォックス」
グレートフォックス内のファルコの部屋。
しばらく使っていなかったがちゃんと掃除はしていた。
帰ってくると思って掃除をしていたわけじゃない。
だが、すぐ使えるようにしておいてよかったと思う。
今日はファルコと自分とナウス以外、艦の中に居ない。
他の皆は買出しに行っている。
「おはようファルコ。もう昼だぞ」
「ん・・・ああ」
「御飯食べるだろ?」
「おう・・・」
めんどくさそうに彼はベットから起き上がる。
俺はぼんやりとファルコの様子を見ていた。
不意にファルコがこっちを見る。
「なんだ?先に言ってていいぜ」
「・・・あ、いや。ファルコと一緒に行こうと思って」
「ま、いいけどよ」
俺は焦点の定まらない眼をしたまま、ドアの横に突っ立ったまま動かないでいた。
「フォックス、行くぜ」
気がつくともう彼は着替え終わっていた。
懐かしい姿に俺は薄く笑った。
彼が帰ってきたんだと、少し嬉しく感じたからだ。
ファルコはドアから出て、その後ろに続く。
昼食はもう作っておいた。
簡単なパスタとピザ。
食べながら、ファルコと会話を交わす。
「ファルコ、今日の予定は?」
「ない。お前は?」
「ない。留守番」
「じゃあ俺もか・・・」
彼との久々に2人っきりだ。
あ、ナウスもいるから3人かな。
「アーヴィンの整備も昨日に内にやったからな〜」
「やること無しか」
つまらなそうにファルコが呟く。
「まあいいじゃないか。たまには暇でも」
「まぁな」
ファルコは一度は居なくなった存在だけど、居ない間もどこかでよく思い出していた。
この艦内では、思い出が多すぎる。
「ファルコは出てってた間、何してたんだ?」
「ん?まぁ色々だな・・・」
遠い目をして黙り込む。
こら、ちゃんと話せ。
クビにしちまうぞ。
なんて言えないので。
「そっか・・・」
仕方が無く、訊くのをあきらめる。
「お前はどうだったんだよ」
「んー色々。そうだなぁ」
ぽつぽつと思い出す。
最近の鮮明な記憶はやはりダイナソープラネットの事。
色々ひどい目にあったし、嫌な奴にも会ってしまった。
トリッキーの事。
クラゾアの事。
恐竜達の事。
自分に起きた、不幸の事。
「リンチくらったり崖から落ちたり檻にいれられたり磔にされたり」
「ほぉ・・・・・・・」
「あとさ、俺がダイナソープラネットに行ってたとき占いみたいなものがあって」
ちょっと懐かしい予言を思い出した。
「その占いで俺の仲間の誰かが俺の事を常に考えてくれてるんだって」
「・・・・」
「で、その人にはすぐに会えるって」
「ほー」
「会えたよな、ファルコ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・あ゛ぁっ!?」
彼がデザートに持ってきたレモンパイを落としそうになる。
顔がわずかに赤くなっているのが可笑しい。
「俺の事、常に考えてくれるなんて結構リーダー想いだったんだな〜」
「バッ・・・何言ってやがる!」
テーブルの上に乱暴にパイの皿を置く。
ファルコは焦っていた。
意地の悪い質問をすれば、こういう態度をとるのはわかっていたのに。
「違うのか?本当に?全然俺の事なんかどうでもよかった訳?」
「や・・・それは・・・そうじゃねぇけど」
「じゃあ考えてくれてたんだ。俺の事」
いたずらっぽく微笑んで見せた。
彼はこのガキ、と俺の頭に手を押し付けた。
「ぎゅー」
「つぶれた声出すな」
「つぶしたのはファルコだろ」
テーブルにほっぺたをくっつけたまま反論してみる。
ぶちぶち言ってると空手チョップが落ちてきそうな雰囲気になった。
「フォックス、お前は」
「何?」
チョップが出てくる前に、俺はもさもさとレモンパイを食べ始める。
流石に食べている時は手を出しはしないだろう。
「お前は俺の事考えてたのかよ?」
「うん」
「・・・どんなことを」
「生きてるかなーって」
「・・・アバウトだな」
「まだ好きかなーって」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ゛ぁ?!」
隼が豆鉄砲食らった顔してる。
衝撃度から言ったら、ブラスターぐらい?
ああ、また俺の中の背徳感が増えた気がする。
言うことを、少し間違えた。
「お前、いつも以上に今日は掴み所がねぇぜ」
「ずっといなかったからだよ。馬鹿」
「誰が馬鹿だ!誰が!!」
「ファルコだよ。・・・って痛い痛い耳引っ張るな!!」
「お前が馬鹿な事言ってるからだ」
顔赤くしてるくせに。
馬鹿。アホゥ鳥。
「俺の事嫌いになったから出て行ったのかと思ったりした時もあった」
でも、と付け足す。
「そんなわけないよな。ファルコ、俺の事好きだったんだ」
「う、うるせぇっ!!」
「俺もそうかもなー」
がったん!!!
彼が椅子に座ったまま真後ろに倒れた。
おーい、生きてる?
「いてて・・・」
「鳥頭になるぞ」
「あーうるせぇっ!黙れっ!!」
ぱくっと俺は口を閉じた。
沈黙が生まれる。
「・・・暇だな」
「そうだね。・・・じゃあ遊ぼうか」
相槌が欲しそうだったので口を開いた。
「は?」
「遊ぼう!暇のときは遊ぶ!!」
「ハイハイ・・・」
俺達は同時に椅子から立ち上がった。
やっぱり訊けない。
『放浪してた時に、誰か好きな人とか出来た?』
なんて訊けない。
訊けば、この背徳感がさらに増しそうだ。
fin.
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