+雨が降る日は+

ざぁざぁと天から降り注ぐ、大地への恵みの雨。
しかし、今の俺達にとってはただ、ただ、困ったもんにしかすぎない。

「雨止まないね〜ブルー」

俺の横でうとうとしながらレッドが言う。

「そうだな・・・お前寝るなよ」
「寝ないよぉ〜ふあぁ・・・」

こいつ、寝る気満々だ。
まぁ昼飯食った後だし、俺も少しは眠いけど。

なにより、この雨。
いきなり降り出したもんだから、俺達は木の下から出られねぇ。
・・・うっとおしいぜ、まったく。

「ん〜・・・」
「おい、寝るなっつーの!」
「寝てないってば〜・・・くぅ・・・」

じゃあなんでもう目ぇ閉じて俺に寄りかかってんだよ。
たいして重くは無い・・・けど俺がこいつの枕になってんのは気にくわねぇ。
とりあえず、起こす。
俺は左手の中指を親指に構えてレッドの額に持っていき、一発弾く。
びしっ!っと小気味良い音がレッドの額の上で響いた。

「いった―――いっ!!」

案の定、レッドは額を押さえてこちらを睨んできた。
それだけでもう涙目になっている。

「いきなりでこピンするなんて〜ブルーのらんぼーもの〜!」
「ケッ、てめーが俺を枕にしてっからだろ!」
「ヒドイ〜痛い〜」

あ―うっとおしいっ!

「お前は女々しいんだよ!」

レッドのほっぺを掴んでにょ――っと左右に引っ張ってやる。
思ったより、よく伸びた。

「ひたいひたいお〜ぶゆーのばあぁ〜!!(痛い痛いよ〜ブルーのバカ〜)」
「何言ってやがんだてめーは」

手を放してやるとぷちょんと伸ばしたゴムが戻る感覚で赤くなったままのレッドの頬が元に戻る。
そしてレッドの俺を見る目に恨みがましさが追加された。

「・・・あんだよ」
「知らないっ!!」

ぷいと俺に背を向けて赤くなった頬を擦る。
ぼそぼそと「痛い〜」と言う声が聞こえた。

「・・・ケッ・・・」

俺もレッドに背を向ける。
だいたい悪いのはレッドだ。こいつが俺にっちょっかいかけるから悪い。
俺は悪くない。

「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」

無言で雨の止むのを待つ。
こんな雨、とっとと止んじまえ。そしたら、レッドに行くぞって声をかけられるのに。

・・・・ん?

なんで俺レッドの気ィ使ってんだ?ああもうバカじゃねぇか、俺。
俺が頭をがしがしと掻いた瞬間、

ぴちゃっ!

「うわっ!?冷てぇっ!」

葉っぱに溜まった雨水が俺の顔に落ちてきた。
・・・なんでよりによって俺の上に落ちてくるんだよ。
落ちるんならレッドの上に落ちやがれ!
・・・そういや、さっきからレッドの奴、えらく静かになって・・・。

「レッド・・・?」
「くー・・・すー・・・」

振り向けば、静かな寝息が聞こえてきた。
木にもたれかかり、熟睡している。

「・・・寝てやがる・・・」

こいつのノーテンキさには呆れるな、マジで。
顔に落書きでもしてやろーか。へへん。

「ざまーみろ」

ちょちょいと携帯用の筆でほっぺたにうずまきを描いてやった。

「ふ・・・はは・・・・」

俺は声を出さないよう、笑いをこらえた。
さて、雨が止むまで俺も休んでおくか・・・。
こんなうっとおしい雨、とっとと止んじまえ。



――レッドがほっぺの落書きに気付いてブルーをファイヤロッドで燃やした頃に、雨はようやく止んだ。
雨は止んでも、レッドとブルーのケンカはもう少し、続きそうで。

「もぅっブルーのバカ!意地悪!」
「なんだとっ・・・アチッ!てめぇファイヤロッド使うなっ!!」

ぎゃあぎゃあと騒がしく野を進んでいく2人の後ろでは。

「二人とも、本当は仲が良いのに」

明らかに除けものにされている妖精がポツリと呟いた。











                                         fin.





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